目に見えるものを確実な視点で捉えてゆく壷坂輝代選と、不確かなもののなかに「モノ」の本質を見極めようとする樋口由紀子選。しかし、それがこれぼと鮮明に際立つとは思わなかったが、参加者には堪能できた2人選であったはず。
準特選
月あおくきれいな丸は別室で 井上せい子
輪をちぢめ目覚めを覗き込む埴輪 山田ゆみ葉
特選
アインシュタインの舌がマンホールから見える 木下草風
人名の句はあまり評価したくないが、この句は一読、頭の中にひらめくように鮮明に映像が湧いてきて、現代という時代のいかがわしさ、いやらしさ、手触りとか、あるいは悪意とか批評を強く感じた。(選者)
いずれにしろこの句を評価するなり、否定するなりそれは個人の自由だが、素通りしたのではここに参加した意味がない。賛否両論の話題が盛り上がれば二人の選者も本望だろう。(と、ちょつと煽って大会をいつまでも愉しみたい・明)
血の指で丸をかいてあげようか 小池正博
星雲の子孫の丸い蒙古斑 くんじろう
ほととぎす水でふくれた丸あげる 石田柊馬
悪党芭蕉丸い眼鏡をかけている 吉岡とみえ
耳を包むとやわらかい丸になる 明
かえすがえすも悔しいのは「ごうごうと音たててくるただの丸」を出しそこなったこと。

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