平賀さんの選ぶ言葉が好きです。
沼・砂糖・ふんだんに・餡パン・洞・肌合い・縄文人・象・お焦げ(BS21号)
けんけん・半熟卵・力瘤・肉球(BS20号)
なあんだか懐かしい。
諸星大二郎さんの漫画に出てきそうです。
描線のなめらかでない、塗られた影の部分の多い漫画です。
けんけんの半熟卵擦り抜ける
月面に運慶作の力瘤(BS20号)
この辺は沼で砂糖をふんだんに
餡パンの洞に最高責任者
象の鼻いちどは月を裏返す
天空に石を落としている仰臥
落暉今お焦げを取りにいらっしゃい(BS21号)
大人な方がとてもよい加減に(いい加減ではなくて)作られている。
そんな気がします。
引き算してあるというのか、
劇的な光景を日常近くに引き戻しているような。
ことさらの美句などはけして使わず。
「けんけんの半熟卵」とか「月面の力瘤」とか
にいっと作者が笑っている気がします。
「象の鼻」は応援したくなるし、
「天空に石を落とす」遊びは、子どもの頃しました。
逆立ちして地球を支えているふりとか。
(これは自分ではできないので同級生にしてもらいました)
手元にあるバックストロークを遡ってみました。
(もっているのは14号と17号以降ですが)
ちょっと雰囲気が違います。
陰毛の白きを手漕ぎ舟が出る
残念を竹輪の穴が転がりぬ
お布団を跨いで行った忘れ物
枯山水仏の鼻孔閉じてある(BS17号)
なんだか20号・21号の句より川柳っぽいです。
なかなか見えてこないことをすぱっと書かれて、
あ、見える、と思わせるような世界がかっこいいなと思います。
「仏の鼻孔閉じてある」なんて思わず笑ってしまうのですが、
転がる「竹輪の穴」や「跨いで行った忘れ物」にも興味シンシンですが、
好きさの度合いでいうと、私は20号・21号の句がより好きです。
少し前の句で、好きな句。
老人の眉間に沈みゆく気球(BS14号)
ああ、いいなぁ、と思う。
見えるもの。
シュールレアリスムの絵画にもなりそうです。

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