川柳人は議論を嫌うという、半ば常識化されていた通説を覆したのが四年前の「バックストロークIn京都」のシンポジュウムであった。しかも「軽薄について」と、およそ賛同を得られそうもないテーマを設定したにもかかわらず、会場に入りきれないほどの参加者を得たのである。
このことに自信を得た私たちは、あくまではシンポジュウムを主に、句会を従にして、東京で「悪意について」、そして第三回としておなじ路線の「虚について」を仙台で開催することになった。
司会者は「虚」だけを捉えても抽象的で解り難いが、「虚々実々」「虚実皮膜」「虚構」などを切り口に進め、芭蕉の「奥の細道」は必ずしも事実のみが書かれているのではなく、一つの文芸作品として虚構が仕掛けてある、と参加者の興味を引き寄せる。
そして、書かれたことの事実が感動の主体であった川柳に、フィクション(虚構)が取り入れられるようになる過程を踏まえて、各パネラーに話がつづく。
途中、休憩もない二時間が座の乱れることもなく保たれたのは司会者の手柄であり、パネラーの魅力であったに違いないが、それ以上に聞く側の真剣さが会場全体を支配していたようであった。

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