季語は義肢 公孫樹は黄になりませう
切れは膿 濃縮果汁煮つまりて
侘びは琵琶 湖には湖の愁いあり
寂は錆 アパルトヘイトとは如何に
恋は砂 安部公房の手弱女振り
雑は像 ロールシャッハは受けるべし
花は穴 アナクロ三次方程式
良祐の創作工房はうず高く積まれた蔵書に囲まれているだけでなく、まるで理科室のようにフラスコやビーカーが所狭しと置かれていたのではないか。言葉を切断し解体し、撹拌し融合を試みる。それはある意味邪道でしかないが、たとえ無機質な言葉であっても、手にかけた言葉には思想が付加され、作品として第三者に手渡されると信じていたに違いない。しかしまた、実験とは徒労の繰り返しであることも実感していたであろう。まれに「侘びは琵琶 湖には湖の愁いあり」と佳句を得ることはあっても、秩序のない言葉の実験を試み、その度に言葉に打ちのめされながら、手篭にしょうとした女に逆に翻弄されるように、川柳のタチの悪さに絡めとられてゆく。

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