韓国の貧しい村に一人住む「おばあちゃん」と孫との出会いと別れ。ストーリーらしいものはほとんどない。自然と人が寄り添うように暮らしている寒村と、出演者もそこに住む村人たちという徹底した映画作りが、まるで人生の豊穣さを物語る皺のように味わい深い映画になった。
読み書きも、話すこともできないおばあちゃんと、都会からやってきた孫との触れ合い。きたないおばあちゃんを嫌い、何かと当り散らす孫と、それでも黙って孫の言いなりになっているおばあちゃんの間にさまざまな出来事があって、やがておばあちゃんに心を寄せてゆく孫の心の移り変わり。
フライドチキンが食べたいという孫に、南瓜と交換した鶏をまる茹でするおばあちゃん。南瓜を売って靴を買ってやり、食堂で孫にだけおいしいもの食べさせ、バスに孫を乗せ、自分は坂道を歩くおばあちゃん。
バス停でおばあちゃんを待ちつづける孫。掘っ立て小屋の便所に一人行けなくて、ウンチの時だけはさそばにいてと甘える孫。転寝するおばあちゃんに毛布をかける孫。
言葉にすれば何でもないが、それらのシーンの映像が心を揺さぶる。特に演技をしないおばあちゃんの孫へのいとおしさのにじみ出る演技は絶品。
母が迎えにくる日、あれほど嫌っていたおばあちゃんに文字を教え、何枚かのはがきを渡し、ぶっきらぼうにバスに乗る。しかし、そのはがきには「ボクに会いたくなったらこれ」「病気になったらこれ」「歩けなくなったらこれ」を郵便局にだせばボクがくるから、と書いてあった。
私もかなり映画は見ているが、こんな単純なストーリーでこんなに泣かされるとは思わなかった。もっとも涙もろくなったとも言えなくはない。
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3637

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