GOKEN の誌上大会で
オブラートはがす現代かなづかい 沼尾美智子
を四人の共選で石部明が特選、他の選者は入選にもしていない。
四人とも入選の句が
夕焼けをめくって確かめる噂 国方 艶子
であることが面白い。
共選は様々なところで行われており、それぞれの選評が付されていることも多く、一歩前進を考えるなら、選者間の意見の交換が実現されれば意義を増すと思われる。
共選の問題は遠くへ置くことにして、上の現象は川柳の伝統的な《飛躍》について興味を引出してくれる。
つまり、「オブラートはがす」の句を意味から読めば、「現代かなづかい」ということについての作者の認識が「オブラートはがす」へ飛躍している。石部明は選評に
特選とした「オブラートはがす現代かなづかい」は誰にでも解る句ではないが、「オブラート」という薄い膜を「はがす」ところに現われる「現代かなづかい」(現代の国語を書き表すためのよりどころ)の本質にやわらかく批評が加えられている。(後略)
と、この句の飛躍の意味を書いている。
四人が入選にした「夕焼けをめくって」から「確かめる噂」への飛躍と比べれば、決定的な違いは石部明の言うように「批評」の書かれていることと、情感の書かれていることにある。
この違いは、川柳の現状をものがたっていてとても興味深い。いま川柳がどのようなモチーフから書かれているかの、幅の広さが見えるだけでも面白い現象だ。
いま一つ、おもしろいことがある。共に「はがす」「めくって」という動詞を飛躍のスプリングボードにしていることである。
はからずも、モチーフの違いと飛躍の同質性がなまなましく現われた。
伝統論の視線で見れば、うがちと飛躍の関係性が川柳の歴史の中にあったことを思い浮べることとなる。

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