2016/9/28 | 投稿者: 鹿苑院

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2016/9/28 | 投稿者: 鹿苑院

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吉川英治作品には時々「竜頭蛇尾」という印象を受ける。序盤はものすごく丁寧で細かいのだが終盤になると原稿の制限枚数が近づいたかのようにほとんどダイジェストで終わるパターンが時々ある。

足利尊氏死去までの太平記というとストーリーはだいたい三部に分かれる。鎌倉幕府滅亡、南北朝分裂、足利家の内紛である。
この『私本太平記』は文庫にして全八巻なのだが、鎌倉幕府の滅亡がなんと五巻の中盤である。全体の2/3がそれに費やされており、そこまでの描写は微に入り細に入りなんとも細かい。
後半のクライマックスは湊川の戦いで、その楠木正成の死も丁寧に描かれているが、その後となると北畠顕家、新田義貞、後醍醐天皇…とあれだけ作中に重大なポジションを占めた人物の死があっさりダイジェストで処理されてしまい(特に義貞などNHK大河なら「ナレ死」と言われるレベルだ)、あれれと思っていると主人公尊氏もあっさり終焉を迎える。

なんだか辛評しているような書き方になってしまったが、巨匠の大作だけあって全体のクオリティは高く、読んで損はしない。ただ、鎌倉幕府滅亡までの密度を最後まで保ってくれればもっと素晴らしい作品になったのにと惜しむ。
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