2015/7/31 | 投稿者: 鹿苑院

江戸幕府には、僧侶の転属を命じる権限があった。ある時、この転属命令にどうしても従わない坊さんがいたので松平信綱と阿部忠秋が説得にやってきた。

まずは松平信綱が説得を試みた。なぜ転属が必要なのかを非の打ち所がない理屈で説明したところ、坊さんは感じ入ったように、
「さすがは知恵伊豆様。一分の隙もない説明ですね」
「おお、では転属してくれるか!」
「だが断る」
「ええっ! おい、納得したんじゃないのかよ!?」
「だって嫌なものは嫌なんですもん」

ここで阿部忠秋にタッチ。忠秋はこう切り出した。
「坊さん、どうしても転属が嫌?」
「はい、嫌です」
「いつまでも拒否し続けてるとお咎めを受けるかもしれないけどそれでも断る?」
「どんなお咎めを受けてもお断りです」
「そうか、じゃあ咎めとして転属を申し付ける」

この言葉を聞いた坊さん、手を拍って大笑いし、「こりゃ一本取られましたな。いやあ、知恵伊豆様より豊後守様(阿部忠秋)の方が一枚上手ですね」とあっさり転属を受け入れ、その後は一言の文句も言わなかったという。

知恵伊豆も切れ者には違いないのだが、阿部忠秋と比較する逸話になるとどうも忠秋においしい所を持っていかれる役回りになるようだ。
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