2012/12/30 | 投稿者: 鹿苑院

歯学部の学生は実習の一環で技工士の真似事をする。蝋を捏ねたり、金属を溶かしたりして銀歯や入れ歯を作るのだ。ある日、不器用なオレにしては珍しくイメージ通りの物を作ることができた。自信を持って先生に見せると、「なんだこりゃ?」と言われてしまった。
先生の反応も無理は無い。勉強不足で、最初に思い描いていた完成イメージが間違っていたのだから、その通りにできたところで合格するはずが無かった。いかに上手く経過を運んでも、最初の目的を間違えていたら成功しないという良い例である。

この時期になると新聞やニュースでは「今年の10大ニュース」なんてのを選んで載せていたりする。日中・日韓関係の悪化がそれに選ばれていたが、ここで知っておいて欲しいことがある。
関係悪化と言われるとつい「どうにか改善しなきゃ。仲良くしなきゃ」と思ってしまいがちだが、外交の目的とは仲良くすることではなく、交渉によって自国の利益を得ることである。だから、対立している方が国益になるなら対立したままの方が良いし、時には椅子を蹴って「わしゃ怒っとんねんで」という態度を明確にするのも必要だ。

日本が米英に宣戦した時、イギリスのチャーチル首相が友人への手紙でぼやいている。

日本人は無理な要求をしても怒らず、反論をしない。笑みを浮かべてこちらの要求をすんなり受け入れてくれる。しかし、これでは困る。
反論する相手を説得し、ねじ伏せてこそ政治家の業績になるというものだからだ。そこで今度はさらに無理難題を要求してみると、これもまた呑んでくれる。
こうなると議会は、『今まで以上の要求をしろ』と言ってくる。無理を承知でそれを言うと、突然、日本人はまったく別人のような顔になって、『これほど、譲歩に譲歩を重ねたのに、こんなことを言うとはあなたは分からない人だ。事、ここに至っては、刺し違えて死ぬしかない』と言ってつっかかってくる」


結局、イギリスは日本の軍事力を見誤っており、イギリス東洋艦隊は日本軍の前に壊滅してしまうのだけど、チャーチルはこう言う。

日本人が最初からこれだけの実力と覚悟を持っていることをこちらにそれとなく教えてくれていたら、妥協する余地はいくらでもあったのに、それなのに日本人は黙って何も言おうとしないから、我々は大変な目に遭った


愛国者のオレでもチャーチルさんすいませんという気にさせられる。外交の手順とはまずお互いが100%自国にとって有利な手前勝手な条件を出し合い、そこから双方納得できる妥協点を探っていくものなのだ。

韓国の朴新大統領は「日韓関係なんてすぐ改善できるよ。日本が韓国の言い分を全部受け入れれば良いだけ」と発言した。傍若無人だし腹は立つけど、実は外交の定石通りの第一手であって、特にとんでもない発言というわけではない。日本としては呑む必要が無いし、先方ももしまともな外交感覚を持っていたらこのまま呑ませようとは思っていないはずである。
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