2012/7/4 | 投稿者: 鹿苑院

クマというのは不思議な動物だ。紛れも無い猛獣であり毎年被害が出ている恐ろしい動物だが、一方でプーさんとかリラックマとかの可愛いイメージも定着している。天使と悪魔の二面性を持った動物だと言っていい。

その悪魔の面を描き切った小説をおととい読破した。なんともズシリとした読み応えのある本だった。吉村昭著『羆嵐』。

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まず表紙がいい。闇に紛れてたたずむヒグマの凶獣としか言い様のない禍々しい姿がこの本の内容を端的に語っている。そう、この物語は人食いグマの話だ。

大正4年に北海道の開拓村に現れたヒグマが6人(胎児を含めれば7人)の人間を殺害した、日本史上最大の獣害事件と呼ばれる三毛別羆事件。それを扱ったのがこの小説である。

野生の凶獣の前には銃を持った集団の人間とて無力であり、それに唯一抗し得たのは…。

安っぽい猛獣映画のように大袈裟な描き方をせず、淡々とした文体がなお事件の緊迫感をよく表している。ぜひ読んでもらいたい一冊。
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