2010/10/10 | 投稿者: 鹿苑院

孝明天皇の次代は明治天皇──これは有名でありどんな教科書にも載っている。しかし、同時期にもう一人の天皇がいたことはあまり知られていない。その名は東武天皇。

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東武天皇の前身は輪王寺宮である。輪王寺宮は江戸幕府創設早々に始まった制度で、歴代天皇から親王を一人いただいてその役職(僧侶)に就ける。実態は幕府が天皇家から取った人質であり、もし反幕勢力が京を占領して天皇を推戴した場合、一方的に幕府が朝敵とされないための対抗措置としていつでももう一人の天皇として推戴できる──そういう存在だった。なお、輪王寺(日光)の住職は名誉職で、実際には江戸・上野の寛永寺に歴代住んでいた。

本当に薩長が京を占領し、明治天皇を推戴した時、予定通りにこの輪王寺宮は旧幕府勢力によって推戴され、東武天皇となる。「東の武家政権の天皇」、いかにも彼に相応しい名である。奥羽越列藩同盟の盟主となるが、戊辰戦争の敗北により降伏。

明治になってからは許されて皇族に戻り、名を北白川宮能久親王と改める。陸軍に入り、台湾征討近衛師団長として現地に赴くも、同地で病没。享年48歳。

天皇家に生まれ、輪王寺宮として関東で暮らし、天皇に即位するも朝敵となり、最後は外国で病没。なんとも数奇な生涯だが、東国武家政権最後の盟主として、その名を埋もれさせたくないと思う。
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