2008/3/30 | 投稿者: 鹿野苑

金などはない方がいい。

無論、貧乏がいいという意味ではない。人類が経済という概念を発明しなければどんなによかっただろうというのが今回のテーマだ。

星新一さんの短篇「とんでもないやつ」(短篇集「妄想銀行」に収録)を読んだ時の衝撃は忘れない。軽くあらすじを紹介する。

怠け者の原始人グウ(眠るのが好きなのでいびきの音から名付けられた)は肉を食いたいが狩りに参加するのが嫌で、いつも海岸で貝を拾って食べている。
ある日、別の村の人がマンモスの肉・クマの毛皮・石で作ったやじりを持って物々交換にやって来た。グウはある悪だくみを思いつく。
「この丸い貝殻一枚が、毛皮一枚なのだ。また、その一枚で肉ひと抱えにもなる。おれはそれらの品物が必要になれば、これを持って出かけていって、交換してくるわけだ。」
相手はグウの口車に乗り、この取引に応じてグウの食べ残しのただの貝殻を持って帰る。上手くだましたグウはにやにや笑いが消えない。

最後に本編の最後の段落だけそのまま引用する。

「だが、グウもこうと知ったら、とても笑うどころではなかったろう。単なるちょっとした思いつき程度でもなく、また、被害者は一人にとどまらなかったのだ。それから後、長い長い年月にわたって、いまに至るまで、グウが考え出した貨幣というものが猛威を振いつづけている。それをめぐってどんなに多くの人類が頭を悩ませ、泣き、わめき、時には他人を殺し、自らの命を絶ち、奴隷状態になり、悪をばらまき、内乱、戦争という限りない被害をこうむったことか……。」
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