『草祭』
恒川光太郎
人は夢想する。
次生まれ変わったら、あの時に戻れたら。
より良い今を、より良い未来を求め、今とは違う現在を夢想する。
でも、きっと何も変わらない。
今とは違う現在にいる自分も、同じように夢想しているに違いないから。
たとえ場所や環境が違おうとも、それは変わらないに違いないから。
同じ町、同じ空間に居合わせ、違う時を生きる人たちを描いた短編集。
不思議な世界で起きる必然の結末。
今とは違う何かを求め、何かを得、何かを失う。
それは不変の道理。
想像、妄想好きには堪らん世界観を作る作家さんです。
『夜行観覧車』
湊かなえ
人の目は前しか見えない。
でも振り返ることで後ろを見ることが出来る。
首を振れば左右が見え、立ち止まればじっくりと周囲を見渡すことが出来る。
そうすることでいつもと同じ風景が、違って見えることもある。
何も変わったわけじゃない。
見ていなかっただけ、気づかなかっただけ。
いつも同じ場所から見ていたから同じように見えていただけ。
ただそれだけで、それに気づくことが出来ないだけ。
高台の高級住宅街に住む3つの家族と1つの事件のお話。
想像上の町、家、家族に起こる私達自身のお話。
『境遇』
湊かなえ
他人には決して理解されず、共有できないもの、それが真実。
だから真実はいつも残酷で、押しつけがましい。
どこまでいっても現実の贋物で、偽物でしかないのに本物よりも本物らしく見え、望まれる。
そして真実は現実となる。
1つの誘拐事件が36年前の真実へと繋がっていく。
徐々に明かされていく過去と現在の真実。
罪を憎んで人を憎まず。
大事なのは過去じゃなくて今ある姿。
そこから始まる未来。
これは終わりではなく再出発の話。
虚しいけども救いのある話。
今ん家に引っ越してから買った本棚がもうじき埋まる。
字は書くのも読むのも好き。
ここ数日は坂口安吾さんの小説に苦闘しております。

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