『宿屋めぐり』
町田康
世界に浸ることを、入り込むことを拒絶するかのような乱雑さ、乱暴さ、混沌で満ち溢れた長編小説。
人生とは繰り返しである。
同じようなことを、少しの差異をもって違うことであると思い、信じ込みながら、あるいは同じであることを気づかないフリをしながら繰り返し続ける。
成功と失敗。
正しいことと悪いこと。
選択はいつでも自らの手の中にある。
チャンスはいつも目の前にぶら下がっている。
それなのに繰り返す。
過ちを。
何故。
それは気づけていないから。
あるいは、気づきたくないから。
全ての責任が自分にあることを。
全ての結果が己の選択の帰結であることを。
だから、知らない、聞いてない、という言葉を繰り返す。
どうしようもなかった、と言い訳を繰り返す。
そんな堂々めぐりを繰り返す。
延々と、永遠と。
題名と表紙の意図するところは、読み終わった時に分かるはず。

0