読書の秋、って誰が決めたんですか?
きっと何奴かの陰謀に違いない。
ということで、今月は3冊。
仕事中、独りになれる時間が少なかっただけ。
『キリスト神話』
トム・ハーパー
本質的かつ元始的なキリスト教解釈をすることにより、失われてしまった真なる信仰心を取り戻さなければならない。
そう、現キリスト教信仰に警鐘を鳴らす1冊。
史実化されてしまったイエス・キリストと聖書の物語。
それらの物語は、基を辿ればエジプトの古代宗教やその他地域の原始宗教、ギリシャ神話など、キリスト以前のありとあらゆる神話の中にある。
がしかし、それら神話が紀元後3世紀、キリスト教会により“歴史”とされてしまったことにより、キリスト教が本質的に訴えていること、教示していることが奇跡という名の事実に隠されてしまい、その結果、真の信仰が失われてしまった。
そして、それを取り戻すためには、イエスや聖書の物語を再神話化することが唯一の手段である。
云わんとしていることには感ずることが多々あるものの、他文献からの引用のみで事実の証明を行なっていたり、その証拠となるものに対する証明、裏付けが一切なされていない(一般向け書籍のため、意図的に省略したのかもしれんけど)、といった点が引っかかるとこ。
その点を除けば、一読に値する本やと思います。
当たり前やと思っている物事、そう信じ込んでいる、信じ込まされている事々を違った視点で見てみる、考えてみる。
事実が必ずしも真実とは限らない。
真実とは作り出すものである。
その人にとって1番都合のいいもの。
それが真実なのだから。
『面白いほどよくわかるギリシャ神話』
吉田 敦彦
ギリシャ神話入門書、という感じの1冊。
要点を押さえつつ、神々の関係性を中心に幾つかの物語を紹介してあり、興味の下地作りには適しているかな。
ギリシャ神話は後のキリスト教や仏教、イスラム教などの宗教の下地にもなってるし、芸術、美術、漫画や小説などのそこかしこにその影響やオマージュが見られるから、知っておくとよりそれらを楽しめるのではないかと。
色んな視点で見たり、読んだり、感じたりすることが出来るからね。
そういった興味の連鎖、知の連鎖ってのは実に面白い。
そうは思いませんか。
次はもうちょい詳しいやつを読もっかな。
『ハッピーエンドにさよならを』
歌野 晶午
題名の通り、“ハッピーエンドではない結末”をコンセプトに書かれた(編纂された)ミステリー短編集。
タイトル買いしたんですけどね、なかなか良かったです。
物語には始まりがあり、終わりがある。
言い換えてみればフリとオチ。
その差異があればあるほど人は惹きつけられる。
やから、不幸な始まりがあって、ハッピーエンドで終わる話が好まれる。
でも、現実はそういう話ばかりではない。
暗いとこからより暗い深みへ落ちることもあれば、その深みに落っこちたまんま帰ってこない場合もある。
底なし沼の原理ですな。
そういう話のほが惹きつけられますな、ワタクシは。
消化不良な、気持ちの悪い、居心地の悪い結末。
そういうものが嫌いな人にはオススメしませんが、現実主義、皮肉好きな人にはオススメかな。
ミステリー作家だけあって、話の中に仕掛けや捻りもあって面白いですよ。

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