『無理』奥田英朗さん著。
市町村合併で誕生した地方都市ゆめの。
市になったのをキッカケに起きた変化、それが招いた摩擦。
大型量販店の進出などによる都市化と商店の退廃。
地元住民と移入者、老齢層と若年層、勝者と敗者。
“昔ながら”からの脱却、現実からの逃避。
そんな鬱屈とした町で暮らす何処にでもいる彼、彼女たち。
その前に立ちはだかる壁、問題、危機、災難、最悪な出来事。
追い詰められた先に救いはあるのか。
それとも、コレから始まる地獄への一歩でしかないのか。
『最悪』、『邪魔』に続く、久しぶりの群像劇型小説。
舞台は3つの町村が合併して出来た小さな地方都市、ゆめの。
あるのは大型複合施設内で寂しく回る観覧車と、厳しい寒さと降り続ける雪、閉塞感と喪失感くらいなもの。
そんな町で各々に思い、願望をもって暮らす人々。
妻の不倫が原因で離婚した公務員。
宗教くらいしか頼るもののないバツイチ保安員。
都会での成功を夢見る女子高生。
仕事にやりがいを見出し始めた暴走族あがりの青年。
先代よりも大きな舞台へと、県政進出を企む市会議員。
同じ町の中で別々の時間を過ごしてきた彼、彼女たちが、それぞれが陥っていく最悪な状況の中、その端々で交わり始める。
そして、それらが同じ場所で重なる時、一体何が起こるのか。
モノゴトの偶然とは、時として必然の結果である。
そう再考させられる作品です。
読後評価としては、『最悪』>『無理』>『邪魔』、かな。

0