忘れもしない一年前の早朝。最愛のキミは旅立った。それはまるで母の事を待っているためのように思えた。18年という、猫にとって長い生涯。最後についた眠りから覚めることなく、虹の橋に向かって旅立った。沢山の思い出を残し。亡骸は我が家の庭。キミを看取ることは叶わなかった。それと引き換えに、最愛の母との最後のかけがえのない時間を貰えたのかもしれない。大切な家族。人も猫も変わらない。
街中でキミに似た影をみるとつい“タマ”と呼んでしまう。膝の上で気持ち良さそうに眠るキミの温もりが懐かしい。キミが居なくなってからすっかり猫と戯れる事が少なくなった。新しい猫を欲する心はある。でも、キミとの思い出にしがみついているうちは新しい猫はキミの代わりという可哀想な役割を負担させる事になる。だからキミとの思い出がもう少し熟成されるまでは新しい猫を迎えるのをやめるよ。新しい猫を1から愛せる時が来るまで。
虹の橋で母と会ったかい?今頃は我が家で過ごしていたように一緒に居ることだろう。キミが一番好きだったのは母なんだから。
日々の忙しさにかまけてキミの墓に手を合わせることがめっきり少なくなりごめん。でも携帯電話の中には数々のキミの写真が残っている。時々、それを見てキミの事を思い出している。ボクの二十代から四十代にかけてキミとの関わりはとても大きな出来事だった。
キミはいつもボクの心に居る。だから決して色褪せる事はない。
タマ、まだちょっと涙がでちゃったよ。
