お陰様で今回のペドリロ役も様々な方々からお褒めの言葉を頂戴することができました。しかし、これは私1人で得た評価ではないと思っています。今回も私の隣には彼女がいてくれたからだと思っています。ペドリロの最愛の彼女ブロンデ。2004年の日生劇場公演から三年。前回のものから更に上積みを望まれる中、充分とは言えない稽古期間での役作りをしなければなりませんでした。プロである以上、決められた期間で成立させるのは当たり前。でも正直かなりなプレッシャーを感じていました。でも幸い私の相手は前回と同じ“彼女”でした。こんなに早く彼女と再会出来るなんて想像出来ませんでした。
「後宮からの逃走」は日本ではなかなか上演する事が難しい作品です。高度な歌唱力と演技力を必要とします。特にコンスタンツェとオスミンのキャスティングが難しいのです。しかもテノール二人、コロラトゥーラ・ソプラノ二人、バリトン、メッツォ・ソプラノ、アルトは登場せず太守セリムは俳優が演じるという特殊な配役。しかしこれが上手く機能すると本当に素晴らしい舞台になるのです。今回がそうであったかどうかの判断は観客席にお任せするとして、今回我々カップルに演出家より課せられた役割は“道化まわし”。舞台上のスムーズな物語の進行を担っておりかなりの芝居能力を要求されました。台詞の一つ一つ、所作振る舞いが普段のオペラではない位細かく指摘、要求されました。時間がありませんから瞬時に理解し芝居で反応しなくてはならずいつも稽古の最後は集中力が切れボーっとしていました。
我がブロンデ役の見角悠代(みかどはるよ)ちゃんはとても勉強熱心。皆さん自分の歌、芝居、台詞でイッパイイッパイになっている中ほかの役の歌、台詞、芝居をほぼ頭にいれていて、まるで演出助手の様に稽古場を動きまわっていました。若いから頭が柔らかいんだなと皆感心し、すっかり彼女をあてにしていた部分がありました(特に台詞や歌詞のプロンプ!)。前回がオペラメジャーデビューだった彼女。カンパニーのマスコット的存在でみんなのから可愛がられていました。私も可愛がった?!クチでしたが当初彼女からはとりつく島もないと思われていました(苦笑)。素っ気ない先輩だったのね。その後彼女はドイツに留学(現在も)。今回が二度目のオペラ。しかも同じ後宮からの逃走のブロンデ役、そして相手が同じ私!何という偶然でしょう。そういうことが三回続けば必然になって恋に落ちるのでしょうか(爆)!冗談はさておき、私はこの再会をとっても楽しみにしていました。彼女がどの位成長したか肌で感じる事
が出来るのです。何せ同じ演目、役柄ですから。そして前回より仲良くなれたら嬉しいと思っていました。彼女とは一回り近く歳が離れているので妹扱いしてしまいます。前回は何とかこの子のデビューを成功させてあげたいと稽古場でも舞台上でも出来る限りのフォローをしてきたつもりでした。今回は…彼女に結構助けてもらいました(笑)。頭の良い子です。稽古場での姿勢、舞台上での度胸、もう、新人さんではありませんでした。頼もしくなったと思える事が多かったです。着実に成長していて嬉しかったです。そして前回は余り感じなかった色っぽさも感じました。でも、甘えん坊さんはそのままでしたけど(笑)。芝居の馬が合うのか細かな段取りをしなくても目配せで分かり合える事が多かったです。そして、前回より仲良くなれましたv(^o^)舞台上だけでなく打ち解けられて嬉しかったです。ですから終わってしまうのがとても残念で寂しさを覚えました。今まで共演した相手役の方々の中でもかなり“イイ感じ”で演っていて張り合いがありました
。これからも大切にしたい相手です。終演後にさすがに三度目はないよね?なんて話しました。あるとしたら次は彼女がコンスタンツェ、私がベルモンテで出ようと約束しました。その機会はいつ訪れるか分かりませんがその日のために準備を始めなくてはいけませんね。
これからも舞台人として、女性としてどんどん磨きをかけステキな人になっていって欲しいです。
悠代、自分の魅力に自信を持ってね。あなたは十分チャーミングなんだから。また、最高の恋人になれますように。可愛い相棒へ愛を込めて(ナンチャッテ)。
