朝6時、緊張のあまりほとんど眠れぬまま起床する。顔を洗い化粧水も付けぬまま浴衣に着替え、テープを流しながら最後の練習を1回。扇子を回す練習を繰り返しすぎて、指がむけてしまった…イテェ(><) ちょろりと朝食を食べ本気振りの雨の中、浴衣に長いコートを羽織っただけのかっこで大荷物を持ち駅へ。忘れ物無いよなぁ〜と、電車の中でも不安になって何度もご祝儀袋やお揃いのお扇子を確認する。9時前に会場に着くと、すでに口上に出演する大先輩方のお化粧が終わっていた。
「あんたたち、もうお化粧できるから早くご挨拶してきなさい」
の指示で、顔師の先生のお部屋へ。ご祝儀をお渡しし、羽二重をかけてもらおうとしたところ、
「もう一度、この石鹸で顔洗って!」
と言われた。化粧もせずに洗いっぱなしで来たにもかかわらず、やはりちょっとでも油分が残っているとダメらしい。ゴシゴシと洗いパッサパサになった顔で再び座ると、テープを使い思いっきりこめかみをつられて羽二重がかけられた。その後、たくさんいる顔師の方の中でNo.2とおぼしき方の前に座る。ガムみたいなもので眉毛を完全につぶされ、その後でっかい刷毛で一気に白塗りを…この顔、コェーよ(><)


顔師の先生は厳しいけど、赤や黒を使って眉毛・目・唇と真剣に丁寧に描き上げていって下さった。30分以上かかって「老松」の顔が完成。
「ほぇ〜、歌舞伎役者さんの顔だよ。やっぱ一流の人が描くと違うなぁ〜♪」
と大感心。たまーに簡単な会で自分で描く、なんちゃって白塗りとはえらい違いだ。嬉しいな☆嬉しいな(*^^*)浮かれすぎて、楽屋で隙を見て携帯でパシャッ!とやる。ああ、ふざけ過ぎたかも。その直後、口上に出演する大先輩の師範の先生方が着付けを終えて入って来たのですかさずパシャリ!みなさま裃姿で、ご家老さまみたいでカッチョイイ。


「早く着付けしてもらいなさい」
と言われ、ご祝儀を持って衣装方さんのところへ。…と、お揃いの新品の真っ白いお着物が3枚。
「今回は、先生に言われて新品作りましたから。仕立て下ろしですよ」
とのこと。ひぇ〜、嬉し過ぎだよ!ひとりに2〜3人が付いて、10分足らずで瞬く間に出来上がった。黒い帯は、後見結びに。自分じゃ絶対にできないから、しげしげと眺めてしまった。だんだんと出来上がって来て、こみ上げる嬉しさと襲ってくる緊張感との戦いとなってきた頃、舞台上では藤間先生を真ん中にして新名取&師範の先生が並び、オープニングの口上が始まった。(つづく)