CT、MRIに続く高度な画像診断装置であるPETの講演会に行って来た。PETとは、がん細胞がブドウ糖を好む特性を利用して、ブドウ糖に構造が非常によく似た薬剤を投与し、その後画像を撮影することによってその薬剤が取り込まれた部位ががんとわかり、一度に全身のがん検査ができるという優れものである。アメリカでは「PET First」と言われ、がんが疑われた時はまずはこのPET検査という考えが支持されている。日本ではまだ限られた医療機関にしかこの装置がなく、自由診療での費用も高いため、まだ一般的な検査とはなっていない。
今はがんが疑われると、まず血液検査・レントゲン・CTやMRI検査・部位により内視鏡や骨生検、骨髄穿刺などが行われ、すべての検査がそろったところではじめて診断となる。内視鏡や生検、穿刺は、苦痛を伴う検査のため、PETで一気に診断ができれば患者側も楽だと言える。ではなぜ普及しないのか?PET装置が高額なため簡単な導入が難しいことと、自由診療の場合の費用が10万円前後という高額のため気軽に受けられないこと、また受けようと思ってもやっている機関が少ないため数ヶ月待ちとなることなどがあげられる。数年前から、特定のがんと診断がついた後の検査は保険診療が認められたが、まだその条件の縛りも大きい。
今回は、このPET検査の詳細と、最新の血管内治療とHIFUナイフの話、ガンマナイフで今どれだけのことができるのか?というお話を、各専門医が一般人向けに説明して下さった。転移してしまったがんに対して、以前はこれ以上は無理とあきらめてしまうしかないという段階であったものが、今は血管内治療やガンマナイフを使って治療ができるようになっている。が、抗癌剤治療や放射線治療など、患者に負担や苦痛が伴う治療がいまだ主流ではある。たとえば、がんの脳転移が数十箇所にのぼる場合でも、今はガンマナイフでの治療で縮小化や消失が可能だ。が、こういうことを知らないで、あきらめてしまう人もいるに違いない。
医療技術の進歩には、めざましいものがある。そんな中、患者もいろいろな手段を知り、その中から納得のいく選択をしていくことが可能な時代になってきている。自分自身の体、ただひとつの命だ。それを大事にするためにも、患者側もおまかせ医療ではなく、自ら学んでいくことが大切なのだと痛感したひとときだった。


