明日の朝に飲むコーヒーが無い!大変だ…。にゃんこ、1日たりともコーヒー無しでは過ごせない。久しぶりに、マルワコーヒーに向かった。ここは、焙煎工場に小売ショップを併設した家族経営のコーヒー豆屋さん。職人気質の社長と男気のある息子さんが豆を焼き、気風のいい奥さまがお店を守っている。駅から離れた住宅街の真ん中にポツリとあるにもかかわらず、入れかわり立ち代り常連さんが、香ばしい豆と奥さまと楽しいひとときを求めて訪れる。
今日はめずらしくお客さんがひとりだけ。時間に余裕があったせいか、息子さんが
「今ちょうど焼いてるんで、焙煎するところ見てみます?」
と声をかけてくれた。お言葉に甘えて、2階の工場に上がらせていただく。大きな焙煎機の中で、30Kgのコーヒー豆が回っている。その横には、焙煎を待つ生豆が素敵な麻袋のまま置かれている。青味がかった生豆の、何と美しいことよ!これがあの、魅惑の飲み物に変身するのね(^^
「季節や気温、天気によっても微妙に変わってくるんですよ」
「なんか、そば打ちみたいですねぇ。豆も生き物なんですね」
「コーヒーって、豆を挽いてお湯をゆっくりと注ぐという飲む前の過程も、楽しみの一環だと思うんです」
「そうですね、茶の湯のあの手順にも通ずる気がしますね」
「でも、こんなに手のかかるものをあえて飲もうと考えたのは、何なんでしょうね?」
「諸説あるんですが、山火事の後にサルがこの焼けた実をかじって喜んでいたのを発見したというのが有力なんですよ(笑)」
などというお話をしながら、焼き上がりを待つ。こういう特別な時間を過ごせるというのは、幸せなことだ。ほどなく焼き上がり、釜の蓋が開けられた。香ばしい香りとともに、ホカホカの褐色の豆がなだれ落ちた。
「はぁ〜、すごいいい香り!」
焼きあがった豆は、艶の無いマットな姿。これを少し寝かせると、表面に脂がまわってあのツヤツヤした姿になるそうだ。大好きなコーヒーが出来上がる姿を見られて、いい経験となった。
この息子さんが、ガンコな社長に焙煎をさせてもらうようになって数年が経つという。最初の頃は、苦労なく上手く焼けたのだそうだが、そのうちどうやっても上手くいかなくなり、苦しい思いを味わったと話してくれた。何事もある程度わかってきた頃に、試練の時が来るのでは無いだろうか?それを乗り越えて初めて、その道で歩いていく自信ができるのかもしれない。今日はいいものを見せてもらい、いいお話も聞けちゃったなぁと思いつつ階段を下りた。1階のショップでは、奥さまがコーヒーの用意をして待っていてくれた。(つづく)
マルワコーヒー→
http://www.maruwa-coffee.com/



