2010/6/6
三昧境9 三昧境
三昧境9
餅つきの大臼とどろ据えにけり
産みたての温みがいとし寒玉子
軍手ながら穿ち馴れして右左
枯柳夕べを炊ぐ舫い船
畑埃立て寒鴉地に弾む
芋鉋焚火の序(ついで)作りもし
水洟の落つると見えて吸はれけり
毛糸玉編む娘に遠く転びつつ
繭玉に触るれば揺れのいつまでも
初富士をまなかひに見つ晴れ着きる
飼兎逃げたるそ庭のちちろ虫
以上昭和28年
「三昧境」俳句編完

大鵬子
餅つきの大臼とどろ据えにけり
産みたての温みがいとし寒玉子
軍手ながら穿ち馴れして右左
枯柳夕べを炊ぐ舫い船
畑埃立て寒鴉地に弾む
芋鉋焚火の序(ついで)作りもし
水洟の落つると見えて吸はれけり
毛糸玉編む娘に遠く転びつつ
繭玉に触るれば揺れのいつまでも
初富士をまなかひに見つ晴れ着きる
飼兎逃げたるそ庭のちちろ虫
以上昭和28年
「三昧境」俳句編完

大鵬子
タグ: 俳句
2010/6/3
三昧境8 三昧境
三昧境8
ひまわりや手打ちうどんを奢りとす
紫陽花のむつけき虫憎みけり
扇面に俳画乞われぬ句座の果て
短夜の大戸下せし老舗かな
かたわれの野茨朝な出勤す
昼厠児に伽き(とき)睡魔遂に来る
稲妻や閃き交はすふたどころ
持ち出づる月大杉の秀に得たり
稲妻に雨戸の穴を見つけたり
大の蛇児がなぶり居りひでり道
読みさしの花屋日記や芭蕉の忌
くずの花たそがれ永き杣の宿
農休のて手打ちうどんや蝉の昼
野周りのくわえ煙草や稲の出来
寝そびれて虫滋ければ人恋し
正座疲れに起ちて月を得たり
蜩や屋根にタールを刷き急ぐ
秋晴れの丘に建つ家見て過ぐる
虫の声いつしか灰に書き居たり
芋掘りの腰伸す電車また通る
障子操ればコスモスに置き郵便夫
花屋日記桃青の忌の机(をしょうき)
以上昭和26年
ひまわりや手打ちうどんを奢りとす
紫陽花のむつけき虫憎みけり
扇面に俳画乞われぬ句座の果て
短夜の大戸下せし老舗かな
かたわれの野茨朝な出勤す
昼厠児に伽き(とき)睡魔遂に来る
稲妻や閃き交はすふたどころ
持ち出づる月大杉の秀に得たり
稲妻に雨戸の穴を見つけたり
大の蛇児がなぶり居りひでり道
読みさしの花屋日記や芭蕉の忌
くずの花たそがれ永き杣の宿
農休のて手打ちうどんや蝉の昼
野周りのくわえ煙草や稲の出来
寝そびれて虫滋ければ人恋し
正座疲れに起ちて月を得たり
蜩や屋根にタールを刷き急ぐ
秋晴れの丘に建つ家見て過ぐる
虫の声いつしか灰に書き居たり
芋掘りの腰伸す電車また通る
障子操ればコスモスに置き郵便夫
花屋日記桃青の忌の机(をしょうき)
以上昭和26年
タグ: 俳句
2010/5/31
三昧境7 三昧境
三昧境7
香によれば木犀なりし無月かな
たまゆらの風にあそべる葛の花
芭蕉忌や現世(うつしよ)の句風あきたらず
読みさしの猿蓑集や桃青忌
爽やかに箒目踏んで出勤す
嗅ぎよりて犬の去りたる夜番かな
草家戸に師走さまなる灯を洩し
宿下がり母の老けしが寂しかり
やぶ入りの髪伸ばし足る倅かな
初大師昏れて紙屑ふかれ居り
初髪の衿を抜きたる姑かな
かはたれの鰐口ひびき初大師
五月雨る戸走りに蝋引かせけり
大石斑魚(おほうぐい)料る五月の出刃を研ぐ
公園や五月の氷菓児は欲りて
今年亦孫に撹綱(あみ)買う皐月かな
真ん中に篭り老鶯独りきく
老鶯や正門は鎖し人住める
つづく
香によれば木犀なりし無月かな
たまゆらの風にあそべる葛の花
芭蕉忌や現世(うつしよ)の句風あきたらず
読みさしの猿蓑集や桃青忌
爽やかに箒目踏んで出勤す
嗅ぎよりて犬の去りたる夜番かな
草家戸に師走さまなる灯を洩し
宿下がり母の老けしが寂しかり
やぶ入りの髪伸ばし足る倅かな
初大師昏れて紙屑ふかれ居り
初髪の衿を抜きたる姑かな
かはたれの鰐口ひびき初大師
五月雨る戸走りに蝋引かせけり
大石斑魚(おほうぐい)料る五月の出刃を研ぐ
公園や五月の氷菓児は欲りて
今年亦孫に撹綱(あみ)買う皐月かな
真ん中に篭り老鶯独りきく
老鶯や正門は鎖し人住める
つづく
タグ: 俳句
2010/5/29
三昧境5 三昧境
三昧境5
僚船は時雨に入りし港の灯
土間隅の茗荷が匂ふ夕時雨
病む社舎(いえ)に白きもの干す紅葉かな
喜多院の深山さまなる落葉かな
たばしりて木の実相倚るところかな
撞いて去る鐘いまだ鳴り木実降る
実を降らす幹の太さを抱いてみる
終日を縄なう簷(ひさし)駆菜かな
以上昭和25年
僚船は時雨に入りし港の灯
土間隅の茗荷が匂ふ夕時雨
病む社舎(いえ)に白きもの干す紅葉かな
喜多院の深山さまなる落葉かな
たばしりて木の実相倚るところかな
撞いて去る鐘いまだ鳴り木実降る
実を降らす幹の太さを抱いてみる
終日を縄なう簷(ひさし)駆菜かな
以上昭和25年
タグ: 俳句
2010/5/28
三昧境4 三昧境
三昧境4
萩活けて坊のしじまに足る心
外風呂や高黍丸き月を懸け
秋晴れの島に物焚く煙かな
霞む島舟この内海(うみ)を瀬戸と言ふ
ダイヤルは予報に厄日ものものし
常の日の常の陽たりし厄日かな
病む牛に医を待つ厩夜寒の灯
杣曰くそは毒茸よ是もとや
秋晴れや山雀(やまがら)に擬す鵙の声
秋の灯が燭條を生む留め涙
朝霧の一番渡舟解かれけり
朝霧やはれて行く浮き澪標(みおつくし)
秋袷射垜(しだ)にゐ向ふ肌を脱ぐ
曼球沙華極まる朱に親しめず
秋袷去年の日記なつかしむ
厳選に我が句落ちたり柿を食ふ
我尿(わがゆばり)水に届かず冬の川
榾圍み(ほだかこみ)稲盗人のうはさかな
つづく
萩活けて坊のしじまに足る心
外風呂や高黍丸き月を懸け
秋晴れの島に物焚く煙かな
霞む島舟この内海(うみ)を瀬戸と言ふ
ダイヤルは予報に厄日ものものし
常の日の常の陽たりし厄日かな
病む牛に医を待つ厩夜寒の灯
杣曰くそは毒茸よ是もとや
秋晴れや山雀(やまがら)に擬す鵙の声
秋の灯が燭條を生む留め涙
朝霧の一番渡舟解かれけり
朝霧やはれて行く浮き澪標(みおつくし)
秋袷射垜(しだ)にゐ向ふ肌を脱ぐ
曼球沙華極まる朱に親しめず
秋袷去年の日記なつかしむ
厳選に我が句落ちたり柿を食ふ
我尿(わがゆばり)水に届かず冬の川
榾圍み(ほだかこみ)稲盗人のうはさかな
つづく
タグ: 俳句