先月の中葉頃、リアル・プレーヤーの自動アップデートが機能して、Ver.11に更新されました。それから、インターネットで動画のあるページを開くと、「このビデオをダウンロード」というメッセージが出るようになったのですが、インターネット上の動画をパソコン内に保存することはあまりしないので、「どうせ使わないや」と思っていたのですが、ふと思い出して
Canto Ostinato へ
このサイトには、オランダの作曲家、シメオン・テン・ホルト(Simeon ten Holt、1923〜 )の「カント・オスティナート(Canto Ostinato)」という曲に関する情報が掲載されています。
そして、<media>のページには、サンドラ・ファン・フェーン(Sandra van Veen)、イェローン・ファン・フェーン(Jeroen van Veen)演奏の2台ピアノ版「カント・オスティナート」の映像があります。2003年、オランダ東部のヘルダーラント州にある古い製鉄所を会場にして行なわれた演奏で、時間にして約80分!
このサイトにCD情報もありますが、日本国内で販売されているものはあるのだろうか、と思ったら、
HMV - シメオン・テン・ホルト ピアノ作品集 Simeon ten Holt: Complete Multiple Piano Works [Box Set]
このCD11枚組ボックスセットに収録されている作品は、
カント・オスティナート(Canto Ostinato、1976〜'79)約145分
レムニシャート(Lemniscaat、1982〜'83)約130分
ホリゾン(Horizon、1983〜'85)約140分
インカンタティーIV(Incantatie IV、1987〜'90)約120分
メアンドレス(Meandres、1997)約105分
シャドウ・ノル・プレイ(Schaduw noch prooi [Shadow nor Prey] 、1993〜'95)約64分
収録時間は700分を越えるのに、楽曲は、6曲!
これらの楽曲は、演奏者の人数や繰り返しの回数などは、演奏者の裁量に任されていて、作曲家は、大筋を示しているだけなのだとか。
同ボックスセット収録曲の試聴は、
Amazon.com: Music Sampler
シメオン・テン・ホルトは、1923年、画家、アンリ・F・テン・ホルトの息子として生まれる。'49年からフランスに渡り、オネゲル(Arthur Honegger、1892〜1955 )やミヨー(Darius Milhaud、1892〜1974)に師事、'54年にオランダに戻り、作曲に取り組む。この時期、電子音楽にも取り組んだ。1970〜87年には、Academy for the Visual Artsにおいて現代音楽を教える。'79年には、4台の鍵盤による「カント・オスティナート」が初演される。'85年にアムステルダムで開かれた音楽祭でこの作品が披露されると、オランダ国内に広く知られるようになった。その後、80年代には、彼の作品は、コンサートホールだけでなく、駅や公園など、様々な場所で演奏されることになる。
参照サイト:
The official website with information on the Dutch composer Simeon ten Holt
(このオフィシャル・サイトの<Works>のページを見ると、作品名の下に、duration: variable(演奏時間:一定しない)と記されている)
現代音楽のなかでも、この「カント・オスティナート」のように、短いフレーズの繰り返しからなるジャンルを「ミニマル・ミュージック」と呼ぶことがあります。聴き手に浮遊感や陶酔感をもたらします。代表的な作曲家に、テリー・ライリー(Terry Riley、1935〜 )、スティーヴ・ライヒ(Steve Reich、1936〜 )ら。
ウィキペディア−ミニマル・ミュージック
<君管>から拾ってみると、
テリー・ライリー「In C」(1964)
In C (1/4)
In C (2/4)
In C (3/4)
In C (4/4)
スティーヴ・ライヒについては、
昨年7月の記事をご覧ください。
「ミニマル・ミュージック」は、おもにアンサンブルのために書かれた曲が多い中で、シメオン・テン・ホルトは、ピアノにこだわって、作曲しているようです。また、演奏者の人数や繰り返しの回数などが、演奏者に委ねられているというのも、他にはない特色だと思います。そして、それら(複数のピアノであることと、演奏者の自由度)が、「カント・オスティナート」に抒情詩的な雰囲気をもたらしているように思えるのですが、いかがでしょうか? ライリーやライヒらの音楽は、数式で作られたような、かっちりと整った美しさ、テン・ホルトのほうは、演奏者の感性を滲ませた美しさ、とでも言いましょうか。
その抒情詩的な雰囲気ゆえに、コンサートホール以外の、駅や公園など人の行き交う場所での演奏というものが、とても似つかわしいように思えます。
リアル・プレーヤーで「カント・オスティナート」をダウンロードした後、確認してみたら171MBのFLVファイルが保存されていました。いままで、FLVファイルのままでは、再生できなかったのにね。続けて、スティーヴ・ライヒやラベック姉妹の映像もダウンロードして、...おい、ちょっと待て。いままで、ダウンロードしなかったのは、FLVファイルを再生、もしくは、変換するソフトをインストールするのが面倒だったからじゃなくて、パソコンが古くなってきて、動画再生のような負荷の大きな作業はさせられないからじゃなかったのか?

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