関根千佳『「誰でも」社会へ デジタル時代のユニバーサルデザイン』岩波書店、2002年
ユニバーサルデザインというのは、そういう規格があるのではなくて、そういう視点・考え方・発想・プロセスなのです。ユニバーサルデザインの視点に立った〇〇があるのであって、その〇〇は、衣類や生活用品にとどまらず、形のない制度や仕組みにまで及びます。製品や制度を作っていくうえでどのような視点・プロセスで作っていくか、ということが問われています。
つまり、誰もが社会参加できるためのデザインであること、このことを意識して作られているか、ということに注目するわけです。具体的には、社会参加に困難が伴なう弱者への配慮がなされているか、というのが、鍵になるわけです。さらに突き詰めて言えば、その「弱者」に対する視点というのも重要なポイントです。
本書より引用します。
わたしは、障害者を「non-Ability(能力のない人)」とは思わない。「dis-Ability(能力の発揮を阻害されている人)」であると思っている。だから、支援技術やコンピュータでその障害が補完されたとき、恐るべき能力を発揮する人もいるのである。(p.33)
「障害を意識していない人」が「障害者」という言葉を使うとき、そこには、「なんらかの能力が欠如している人」という発想がありませんか?
陸上競技の障害走は、障害者が走る競技ではありません。競技コース上に障害があるのです。「障害者」も同じ。その人に障害があるではなく、その人の社会生活上に障害があるのです。しかし、よく考えれば、社会生活上の障害というのは何も福祉制度上の障害者に限った話ではありません。骨折などで身体が思うように動かせないとき、あるいは、背が低くて届かない、疲れていて肩があがらないなど、若い頃や健康な時にはできたことが困難になった、そんな不自由さは、誰にでもやってくる可能性があるものです。

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