没後400年特別展 長谷川等伯 2/23〜3/22
本文中、作品名にリンクが設定してあるものは、クリックすると東京国立博物館の作品詳細ページ、情報アーカイブ等で画像を見ることができます。
混雑は覚悟していたので、着いた時(10:40)に「50分待ち」を見た時には、ほっとしたくらい。平成館へ入る少し前に列の後ろを見たら、列が短くなっていて、帰る時(13:50)には、「40分待ち」になっていました。混雑しているだろうから、東京国立博物館所蔵品は、最初からスルーするつもりで、リストを見たら、同館所蔵品は、次の5点のみ。
<
牧馬図屏風>、<
伝名和長年像>、<
瀟湘八景図屏風>、<
松林図屏風>
それに、岡田秀による、<
梅に鼬雀図(模本)>
それ以外の60数点は他館、寺院等から貸し出してもらったもの。なるほど、「名品を網羅した、最大にして最上の回顧展」とうたっているだけのことはあるわ。
展示は、長谷川等伯(1539〜1610)の生涯をなぞるように、ほぼ制作年代順に並べられています。制作年代不詳のものは、同系列のグループとして加えられています。前半には、掛幅が多く、後半には、障壁画が多くなっています。
第1章、能登時代の作品では
<仏涅槃図>(一幅、絹本着色、石川・妙成寺)
<善女龍王像>(一幅、絹本着色、石川県七尾美術館)
<愛宕権現像>(一幅、絹本着色、石川県七尾美術館)
に、ひかれるものを感じました。
「転機のとき―上洛、等伯の誕生―」と題した、第2章には、
<山水図襖>四面。照明の角度を変えて、唐紙の桐文様が浮かび上がるようにしたのも見てみたいと思いました。
京都・大徳寺三門に描かれた絵は写真で展示。通常、三門内を拝観することもできないそうです。天井の絵を見上げるように配置してあるのが、よかった。
<羅漢図>(一幅、紙本着色、京都・大徳寺) 彩色があざやか。鹿の獣毛の陰影が柔らか。
第3章の肖像画には、
<千利休像>(一幅、絹本着色、京都・表千家不審菴)
第4章以降は障壁画
<花鳥図屏風>(六曲一隻、紙本金地着色) 左隻があるかも?
<楓図壁貼付>(四面、紙本金地着色、智積院)
<松に秋草図屏風>(二曲一双、紙本金地着色、智積院) 白菊、むくげ、芙蓉
<柳橋水車図屏風>(六曲一双、紙本金地着色、香雪美術館) 黄金色の橋に水車、黒い柳の幹には、たらしこみ。似たような屏風をどこかで見たような? と思ったら、東京国立博物館所蔵<
柳橋水車図屏風>でした。
<萩芒図屏風>(六曲一双、紙本金地着色、相国寺) 金雲は、ベタではなく、矩形の切箔を散らしている。萩のみ、芒のみの連続は、本阿弥光悦の書のために俵屋宗達が創作した料紙の絵柄の連続を思い出します。
<波濤図>(六幅、紙本金地墨画、禅林寺) 金箔の雲霞の合間に岩に打ち寄せる荒波を描く。二幅のみサイズが異なるのは、襖として描かれた? 円山応挙の襖絵にも匹敵するのでは?
第5章に巨大な仏涅槃図
<仏涅槃図>(一幅、紙本着色、本法寺) 本紙部分だけでも縦793cm、横522cm、表装を含めると、縦10メートルという巨大さ。
第6章 水墨画
<四愛図襖>(六面、紙本墨画淡彩、有楽苑)
梅を愛し鶴と暮らした林和靖、蓮の花を愛した周茂叔、蘭(シュンランのような)を愛した黄山谷(黄庭堅)、菊を愛し酒を飲んで詩を詠んだ陶淵明、これらを二面ずつ計八面の襖に描いたとされますが、陶淵明の二面は所在不明。
<禅宗祖師図襖>(八面、紙本墨画、天授庵)
南泉普願(748〜835)の「南泉斬猫」と、懶サン和尚(サンの字:王へんに賛)の「懶サンワイ芋」(ワイの字:火へんに畏)という禅宗の故事二題を描いたものとか。 唐の徳宗(在位:779〜805)が、懶サン和尚の名声を聞いて、使いを遣わす。使いが訪れた時、和尚は、芋を焼いているところで、よく見ると、鼻水がなが〜く垂れている。使いが用件を伝え、「都へ行くのだから、鼻水くらい拭いたほうがよかろう」と言うと、「わしは、もっと大事なことを解き明かそうとしていて、鼻水を拭く暇も惜しい。」と言って断った。という話が『碧巌録』にあるそうです。
人物の髭や目の描線がシャープでちょっと不気味。水墨画でよく使われるグレーに滲んだ線がないからではないかな。
<竹鶴図屏風>(六曲一双、紙本墨画、出光美術館)
<松に鴉・柳に白鷺図屏風>(六曲一双、紙本墨画、出光美術館)
そうして、最後に
<松林図屏風>(六曲一双、東京国立博物館) この屏風は、平成館の天井の高い展示室よりも、本館2室のほうが似合うと思いました。
参照サイト
東京国立博物館 東京国立博物館ニュース
東京国立博物館ニュース699号に、特別展「長谷川等伯」の記事があります。
メモ: 最寄り駅 JR上野駅公園口、JR鶯谷駅、メトロ銀座線・日比谷線上野駅
料金 1500円
滞在時間 約1時間20分(入場待ち時間を除く)
続いて、本館平常展
1階
19室 伝統工芸―人間国宝の技と美 〜6/6
前史雄<沈金箱「篁」(ちんきんばこ たかむら)>
丸みを帯びた箱に竹林を飛び交う雀を表現。作者は、重要無形文化財「沈金」の保持者。
北村昭斎<
華菱文玳瑁螺鈿箱(はなびしもん たいまい らでんばこ)>
作者は、重要無形文化財「螺鈿」の保持者。
16室 博物図譜─桜を中心に─ 〜4/25
円山応挙<
写生帖>
岩崎灌園(1786〜1842)<本草図説>
筆者は、幕府の御家人。『本草図譜』へと繋がる自筆稿本。
<博物図譜>
新出の資料で、近年に当館が収蔵した図譜。堀田正敦編「禽譜」などに収録する内容との関連が伺われる図が多く含まれている。共通の素材をもとにしながら、図の描き方や注記が異なっており、図譜の制作過程などを考える上で重要な資料の一つである。(展示解説より)
2階
3室 〜4/18
<
玄奘三蔵像>(一幅、絹本着色) 今回の平常展で見たかった品の一つ。衣服の装飾など細かい文様、色彩が残っています。笠(?)の部分の損傷が激しい。
明恵<夢記><書状>があったのですが、読み取れなかったのが悔しい。
伝・紀貫之<高野切>(個人蔵)
飯尾宗祇<
古今伝授書>(一幅、紙本墨書)
<
長春花鶉図>(一幅、絹本着色)
4室 〜4/11
伝・小野道風<継色紙>(個人蔵)
7室 〜4/4
<
四季草花小禽図屏風>(六曲一双、紙本金地着色)
白菊は胡粉を盛り上げ、金雲の縁も金泥盛り上げ。小鳥のほか、蝶や蜻蛉も飛び交う。岩には、アメーバ苔。
伝・狩野永徳<
許由巣父図>(二幅、紙本墨画)
信長、秀吉といった権力者に重用された絵師が、俗世の高位を嫌う絵を描くとは、嫌味な。10室(浮世絵)に、川又常正<
見立許由巣父図>(一幅、絹本着色)〜4/11
狩野山楽<
黄石公張良虎渓三笑図屏風>(六曲一双、紙本金地着色)
右隻に、黄石公と張良の故事、左隻は、「虎渓三笑」の故事。「虎渓三笑」は、廬山の東林寺に住し、三十年余、下山しなかった東晋の僧、慧遠(334〜416)を題材にした話。ある日、陶淵明と陸修静が訪ねて来て、その帰りを談笑しながら送ると、知らぬ間に、虎渓の橋を渡って山を降りてしまい、大笑いしたという。謡曲『三笑』などに創作されましたが、「枕石漱流」という言葉も『三笑』にあるんだとか。
8室 〜4/4
住吉如慶<東照宮縁起絵巻 巻第一>(一巻、紙本着色、個人蔵)
烏丸光広<
東行記>(一巻、彩箋墨画) 光広が京から江戸へ下向したときの紀行文。
有栖川宮熾仁親王<
十体和歌>(一巻、金泥下絵紙本墨書)
メモ: 滞在時間 約1時間(本館のみ)
東京国立博物館を出て、
国立西洋美術館へ
本日第2土曜日のため、常設展無料。
所蔵水彩・素描展─松方コレクションとその後 〜5/30
ギュスターヴ・モロー<
聖チェチリア><
聖なる像(ペリ)> そっと手を触れてしまいたくなる絵。
ポール・ゴーガンの扇型の画面も興味深い。
こちらのブログに画像あり
アトリエ・リュス
はろるど・わーど
常設展のほうでも、ギュスターヴ・モロー、ポール・ゴーガン、モーリス・ドニの作品に惹かれました。ヴィルヘルム・ハンマースホイも所蔵していたんですね。
参照サイト
国立西洋美術館

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