東京国立博物館の平常展。 本館特別1室で、特集陳列<絵巻―模本が伝える失われた姿>、14室で、特集陳列<お雛様と人形>、東洋館8室で、特集陳列<中国近代の絵画>と、特集陳列<蘭亭序>。
本文中、作品名にリンクが設定してあるものは、クリックすると東京国立博物館の作品詳細ページで画像を見ることができます。
模本
特集陳列「絵巻―模本が伝える失われた姿」 本館特別1室 〜4/6
江戸時代に作成された、模本の絵巻を集めた展示。 原本が行方不明だったり災害で消失して、模本から原本の内容や当時の社会をうかがい知ることができるということです。 自分流を入れずに、原本のまま書写するというのは、職人技ですね。
特に、狩野晴川院養信(かのうせいせんいんおさのぶ、1796〜1846)による模本は、複数の人物がかかわっているようですが、詞書(ことばがき)も見事。
<平家公達草紙絵巻(模本)> (一巻、紙本墨画) 〜4/6
<承安五節絵巻(模本)> (一巻、紙本墨画淡彩) 〜4/6
<天狗草紙 興福寺巻(模本)> (一巻、紙本着色) 〜4/6
東京国立博物館情報アーカイブで、画像情報検索に「狩野晴川院養信」と入力して検索すると、晴川院が手がけた模本の数々が見られます。
「模本」とは少し異なりますが、「写す」という意味では、「臨書」「写経」というのもあります。 出光美術館の「西行の仮名」でも、藤原俊成・定家親子とその周辺の人々によって、西行の文書が書写されていた、との研究成果が解説されていました。
本館2階の展示から、
<等目菩薩経巻中(吉備由利願経)> (一巻、紙本墨書) 〜4/13
吉備真備が右大臣となったのを契機に、子の由利が、国家の恩に報いるために発願した一切経の一つ。当初は西大寺の四王堂に5282巻が納められていたという。黄檗染(きはだぞめ)の楮紙(ちょし)に薄墨界を引き、大ぶりの堂々とした文字で書写した奈良時代後期を代表する写経である。(作品解説より引用)
<仏説諸法无行経巻上(中尊寺経)> (一巻、彩箋墨書) 〜4/13
藤原清衡の発願により書写された一切経で、大治元年(1126)平泉の中尊寺建立供養に際し奉納されたもの。紺紙に銀の界を引き、金字、銀字を交互に書写した、いわゆる紺紙金銀交書経の代表的遺品。(作品解説より引用)
<文殊師利菩薩根本大教王金翅鳥王品(神護寺経)> (一巻、彩箋墨書) 〜4/13
伝・藤原行成、藤原定信<安宅切・詩書切> (一巻、彩箋墨書) 〜4/13
この1巻は冷泉為恭の遺愛品で、みずから2葉の断簡を合装して台紙の周辺に装飾下絵を描いている。「詩書切」は三蹟の1人の藤原行成から数えて4代目に定信の自筆である。「安宅切」は、美しい料紙に『和漢朗詠集』巻下を書写した断簡である。筆者は不明。(作品解説より引用)
伝・寂蓮<和漢朗詠集切> (一幅、紙本墨書) 〜4/13
雲紙の料紙に『和漢朗詠集』巻上の冬を書写した断簡。もとは巻子本である。やや筆を右に傾けた筆法で書写されており、筆勢があらわな力強い書風である。伝称筆者寂蓮の活躍時期よりやや時代は下がった13世紀半ばの書写と推定される。(作品解説より引用)
寂蓮も西行と同時代の人物です。この書跡も、寂蓮の真筆を真似て書かれたものかもしれませんね。
「模本」といえば、「蘭亭序」もまた、王羲之の真跡は現存せず、唐の太宗が命じて作らせた、夥しい数の書写、模刻が伝わっているのみ。
特集陳列「蘭亭序」 東洋館第8室 〜5/6
<蘭亭流觴図並蘭亭諸帖墨拓巻 (明拓)> (一巻、明時代・1602年)
巻頭に蘭亭序の定武本三・チョ遂良(ちょすいりょう:チョの字は、衣へんに者)本一・唐模本一を、ついで蘭亭での詩会の様子をあらわした蘭亭図巻を収め、さらに蘭亭序の伝承を記録した関連資料を載せている。(作品解説より引用)
画像上は、定武本、下は、チョ遂良本。 蘭亭で曲水の宴が開かれたのは、中国・東晋の永和九年(353年)
3月3日。 チョ遂良(596〜658)は、唐の太宗に仕えた政治家にして書家。 定武本とは、定武郡で発見された碑石の拓本。
雛飾り
ひなまつりにちなんだ特集陳列 本館第14室 〜4/6
<衣裳人形 鶴亀> (二躰、江戸時代・19世紀)
<雛屏風 花鳥十二ヶ月図> (六曲一双、江戸時代・19世紀)
そのほかの展示では、
東洋館第5室 中国の陶磁 宋〜清時代の陶磁 〜5/18
<
粉彩梅樹文皿> (一枚、景徳鎮窯、「雍正年製」銘、清時代・雍正年間(1723〜35年))
粉彩はヨーロッパの無線七宝の技術を取り入れて康煕末年に始まった新しい上絵付法。この作品は宮廷用に作られた精品で,「琺瑯彩(ほうろうさい)」あるいは「古月軒(こげつけん)」ともよばれる。(作品解説より引用)
<
五彩仙姑図皿> (一枚、景徳鎮窯、「大清康煕年製」銘、清時代・康煕年間(1662〜1722年))
麻姑仙(まこせん)が霊芝(れいし)を以て酒を醸し,西王母の誕生日にこれを献ずる「麻姑献寿」の図が鋭く細密な筆致で描かれ、とくに黒の上絵具が効果的に用いられている。(作品解説より引用)
<玳玻天目(たいひてんもく)> (一口、吉州窯、南宋時代・12〜13世紀)
<禾目天目(のぎめてんもく)> (一口、建窯、南宋時代・12〜13世紀)
漆黒の釉の上にあらわれた銀色の細い線条が、ウサギの毛のように見えることから、中国では兎毫(とごう)さんといい、わが国ではこれを穀物の穂の細い毛に見立てて禾目天目と呼んでいる。喫茶用の茶枠を大量に焼造した福建省の建窯の代表的な製品である。(作品解説より引用)
<青磁尊形瓶> (一口、龍泉窯、南宋〜元時代・13世紀)
中国の龍泉窯で焼かれたいわゆる砧青磁花生の代表作の一つとして知られる。器形と文様は、青銅器の「尊」に倣っている。おおらかな作風に特色があり、むらなくなめらかに施された釉は、淡く澄んだ粉青色を呈している。(作品解説より引用)
龍泉窯の青磁は、本館4室に、<青磁下蕪瓶(せいじしもかぶらへい)>〜4/6が展示されています。
東洋館第8室 中国近代の絵画 〜4/6 では、
溥儒(ふじゅ)<仕女図>(一幅、中華民国・20世紀、個人蔵)
張爰(ちょうえん)<緑荷図>(一幅、中華民国・1945年)
胡錫珪<夢蝶図扇面>(一枚、清・1877年)
秦祖永<槎溪芸菊図巻>(一巻、清・1880年)
下の画像は、賛の部分
本館10室の浮世絵は、花見にちなんだ絵が多いですが、
鳥文斎栄之<桜下遊女と禿図>(一幅、絹本着色) 〜4/6
鳥文斎栄之<六玉川・ゐ手の玉川>(一枚、大判錦絵) 〜4/6
鈴木春信<風俗四季哥仙・弥生>(一枚、中判錦絵) 〜4/6
鈴木春信<寄山吹>(一枚、中判錦絵) 〜4/6
1階の18室、近代美術では、
下村観山<
弱法師>(六曲一双、絹本金地着色、大正4年) 〜4/13
盲目の弱法師俊徳丸が、梅の花の咲く四天王寺の庭で、彼岸の落日に向かって拝む謡曲『弱法師』の一場面。観山は三渓園内の臥龍梅の木に着想を得てこの絵を描いた。(作品解説より引用)
今村紫紅<風神雷神>(二幅、絹本着色、明治44年) 〜4/13
脱力系〜
小林清親<柿に目白>(錦絵、明治13年) 〜4/13
清親は、広重や国芳といった浮世絵版画に加え、写真術や油絵を学んで、文明開化の都市風俗を活き活きと描写した。風景版画や本図のような鳥獣をモチーフにした写実的な描写が特徴である。(作品解説より引用)
参照サイト
東京国立博物館
東京国立博物館ニュース 2・3月号の表紙は、狩野長信<花下遊楽図屏風>です。
ミュージアムショップのディスプレイ
メモ: 最寄り駅 JR上野駅公園口、JR鶯谷駅、メトロ銀座線上野駅7番出口で「しのばず口」、9番出口で「パンダ橋」)
料金 600円、ぐるっとパス(100円割引券)
滞在時間 12:40〜15:00

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