きょうもお暑いようでしたが、屋外の暑熱にさらされることの無いよう、電車とバスを使って移動しました。 バスは、浅草駅前から
台東区循環バスめぐりんを利用すると、往路は、東京国立博物館前に停留所があり、復路は、東京文化会館前の停留所から乗ると良さそうです。この「めぐりん」、通常の路線バスを利用できない地域を結ぶルート設定になっているのか、一方通行の細い道をどんどん進んでいきます。
東京国立博物館の平常展
きょうの目当ては、酒井抱一と土佐光起ですが、
まずは、本館2階、特別1室の特集陳列「東洋の名品―唐物」。
ここでは、梁楷筆、三幅対の出山釈迦図、雪景山水図が目玉ですが、うっかり、どうしてこれが三幅対なのかなぁ? お釈迦さまが修行をしたインドの山は、雪が積もるほどだったのだろうか? などと思ってしまい、冷めてしまいました。 ほかでは、伝毛松「猿図」の猿の毛並みの見事な描写。
国宝室には、「虚空蔵菩薩像」一幅。 縦が1メートルを超える大きな画像で、今では、赤や緑系統の色もくすんだ色調に変色していますが、制作当初は、どんなに鮮やかな色彩だったのでしょうか。
第3室では、「紺紙金字無量義経(平基親願経)」(平安時代末)。
見返しに描かれた、童舞の十種供養伝供の図が鮮やか。
天台座主・慈円による「願文」(鎌倉時代・貞応3年(1224))
「延喜式 巻第四(紙背)」「同 巻第二十」「仮名消息(延喜式紙背)」
平安時代後期に書写されたとみられるこれらの文書には、紙背にかな文字などが書き込まれている。紙が貴重だったための再利用らしいが、「仮名消息」のように流麗な連綿が書かれてるものもある。「仮名消息」は個人蔵。
伝藤原佐理「古今和歌集 巻第四巻首(筋切)」(平安時代)は、料紙が美しい。藍と紫の飛び雲を漉き込み、金銀の箔を撒き、銀の罫線を引いてあるというもの。
伝雪舟等楊「四季花鳥図屏風」(六曲一双・室町時代)は、全体を圧倒するようにびっしりと植物が描かれていて、その隙間に鳥が棲息しているよう。 右双に鶴、松、竹、蓮、万年青など、左双に鴨、梅、山茶花など。
第4室では、千利休「書状(武蔵鐙の文)」を、茶室の床の間を模した展示スペースで。
第7室に、
土佐光起(1617〜91)
「粟穂鶉図屏風」(八曲一双・江戸時代)と
深江芦舟(1699〜1757)
「蔦の細道図屏風」(六曲一隻・江戸時代)。
「粟穂鶉図屏風」は、背の低い屏風なので、視界が開けた、秋の薄野のイメージでしょう。いくつもの粟の穂がうなだれているほか、桔梗の花なども描かれ、20羽以上の鶉が、何かをついばんだり、飛んだり、うずくまったりしています。白い鶉もいる!
「蔦の細道図屏風」は、金地に『伊勢物語』の一場面、デフォルメされた松や槙の木々に、紅葉した蔦の葉がアクセントのように配置されているデザイン。
第8室では、
尾形乾山「銹絵(さびえ)十体和歌短冊皿「八十一歳乾山」銹絵銘」(江戸時代 1743)という各皿が、長方形の角皿を短冊に見立てて、中に和歌を書き込んだもの。 青や紫のしみのような色付けは、料紙の飛び雲を意識したものらしい。
そして、書状類では、
酒井抱一「書状巻」
何が書いてあるか...は、読めませんが、流麗な書体でしょ?
ほかには、松尾芭蕉(1644〜94)「書状」
近衛家煕(1667〜1736)「和歌懐紙」
九条尚実(1717〜87)「和歌懐紙」
大田垣蓮月(1791〜1875)「書状」(かな連綿)などがよかった。
そして、
酒井抱一「秋草図屏風」(六曲一隻・紙本着色)
資料によっては、「月に秋草図屏風」と記されているようです。
金地に銀の月、その月を上下から挟み込もうと触手を伸ばしているような葛をはじめ、桔梗、薄、女郎花(おみなえし)などの秋草が描かれている。 その構図がなんとも、月夜の草叢の暗闇に潜む、怪しさ、狂おしさを感じさせます。 現在は、ペンタックス株式会社所蔵。
田能村竹田「青山白雲図巻」一巻。 谷文晁の描く山よりもこちらのほうが好き。
土佐光成「秋草鶉図」(絹本着色)。 光起の子だそうで、絵が似ています。
ほかには、扇面が数点。
佐脇嵩之「秋海棠図扇面」
狩野栄川院〈典信〉「鹿図扇面」
狩野了承「萩図扇面」
尾形乾山「芙蓉図扇面」
長谷川雪旦「金魚図扇面」
渡辺崋山「紅白撫子図扇面」は、個人蔵で掛軸に表装されていました。
池大雅の一行書「明月満前川」もいい。
曽我蕭白「牽牛花(けんぎゅうか)・葡萄(ぶどう)栗鼠(りす)図」(紙本墨画)は、なんだかわかりません。
第10室の浮世絵では、
鈴木春信「虫籠」や、鳥文斎栄之「風流五節句・重陽」が、好き。
葛飾北斎「桔梗にとんぼ」「菊花に虻」は、虫の羽の文様を空摺りしていますのね。
1階へ降りて、
第13室には、
尾形光琳・深省合作「銹絵(さびえ)観鴎図(かんおうず)角皿(かくざら)/『大日本国陶者雍州乾山陶隠深省製于所屋尚古斎』銹絵銘」(縦横22cm)
尾形光琳の弟・尾形深省が京都の鳴滝に窯を開き、そこで作った作品には「乾山」の銘款をつけた。 この皿もそのひとつで、表面の、中国宋代の詩人が鴎を眺めている図を兄・光琳が軽妙な筆致で描き,裏面には弟・深省が見事な筆で銘款を記している。
「乾山」といえば、
出光美術館で
「乾山の芸術と光琳」 11月3日〜12月16日 という展覧会があります。
第14室 特集陳列「博物館のおもちゃ箱」
「新板百人一首むべ山双六」という双六(すごろく)には、「歌川豊国画 十返舎一九校」とあった。
第16室 特集陳列「江戸の災害」
ここには、安政の大地震の図や浅間山噴火の図がありますが、そのなかに、どこかでみたことある錦絵が、
歌川国貞「風流生人形」...原信田実著『謎解き広重「江戸百」』に載ってました。
(後編へつづく)

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