すずむしがなく空にはぽかりぽかりと雲が浮かび
空を見上げるようにトラの尾やヒルガオの花が咲いています。
タロはそれらをながめながら歩きました。
橋をわたる時すがたをうつしてみてみました。
びしょぬれの時あった女の子に少しシャンとして
あいたいとおもったのです。
タロはうきうきそこを通りすぎました。
かものクルリにあいたいなとおもい、赤とんぼが飛んでいきます。
クルリははずかしがりやだからすぐにげるんだもの
ぼくがきらいなのかな?
みどり牧場がみえてきました。
タロは柵をさわりながら歩きました。
イナの川に近ずくとタロはようじんして隠れるように歩きました。
木の橋にかかるとてすりから川の様子をながめました。
とつぜん かものクルリが見えました。
目と目があいました。タロは何か言おうとしました。
けれどクルリはいなくなりました。
驚いて水の中にもぐりました。
タロはありったけの声でいいました。
「クルリ、ありがとう〜〜
ぼうしひろってくれたのでしょう〜〜
届けてくれて ありがとう〜〜。」
波がぱしゃとはね クルリが戻ってきて
大きく羽ばたいて空へまいあがりました。
そしてそのまま遠くへ飛んで行ってしまいました。
あれは、クルリのあいさつかな?どういたしましてと
言ったのかな。とタロはおもいました。
白かば林の女の子の家までタロは走っていきました。
「ありがとう。」
麦わらぼうしを返すと女の子は「いいえ。」
とうけとりました。それだけでなにも言いません。
タロはあったことを話しようとおもったりしていましたが
何も言わず「じゃあ…。」といいました。
女の子は道のところまでおくってきました。
「また くる。」 「いいよ。」
女の子は手をふりました。
タロはまた女の子の名前を聞くのもわすれてしまいました。
かえりみちは遠くてタロはうんざりしました。

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