乾坤之 初時従 天漢 射向居而 一年丹 兩遍不遭 妻戀尓 物念人 天漢 安乃川原乃 有通 出々乃渡丹 具穂船乃 艫丹裳舳丹裳 船装 真梶繁抜 旗芒 本葉裳具世丹 秋風乃 吹来夕丹 天河 白浪凌 落沸 速湍渉 稚草乃 妻手枕迹 大舟乃 思憑而 滂来等六 其夫乃子我 荒珠乃 年緒長 思来之 戀将盡 七月 七日之夕者 吾毛悲焉
天地(あめつち)の 初めの時ゆ 天の川 い向ひ居(を)りて 一年(ひととせ)に ふたたび逢はぬ 妻恋ひに 物思(ものも)ふ人 天の川 安の川原の あり通ふ 出(いで)の渡りに そほ舟の 艫(とも)にも舳(へ)にも 舟装(ふなよそ)ひ ま楫(かぢ)しじ貫き 旗すすき 本葉(もとは)もそよに 秋風の 吹きくる宵に 天の川 白波しのぎ 落ちたぎつ 早瀬渡りて 若草の 妻を巻かむと 大船の 思ひ頼みて 漕ぎ来(く)らむ その夫(つま)の子が あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽(こひつく)すらむ 七月(ふみつき)の 七日(なぬか)の宵は 我れも悲しも