2008/3/8

新手の成否  プロ将棋鑑賞会

本日、3月8日(土)に、新潟県新潟市の「ホテルイタリア軒」において
第33期棋王戦第3局が行われた。

「羽生善治二冠(1勝1敗)」VS「佐藤康光棋王(1勝1敗)」

まさかの大逆転劇でタイスコアにはなったが、複雑な心境であろう佐藤棋王。
その複雑な思いの要因に、羽生二冠の挑発を避けたことが挙げられる。
しかし、避けたままで終わる佐藤棋王ではない。
本局は後手番で、ゴキゲン中飛車を採用し
先日の王将戦での、羽生新手の局面に持ち込んだ。
当然、羽生二冠も避ける理由はない。
何しろ、この型の決定版ではないかと云われているのだから・・・。

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図の▲9六角が、「羽生新手」と呼ばれている一手で
この3手前の△5四歩が、「佐藤新手」と呼ばれた一手である。
要するにこの局面は、お互いの新手の成否を賭けた局面なのである。
王将戦の久保利明八段はここで△7四歩と突いて、羽生二冠に攻め潰された。
しかし注目を集めた佐藤棋王の次の一手は、△5三玉であった。
以下、羽生二冠は▲6六香と竜取りを防ぎながら攻めを見せ
控室の予想通りの展開となっていく。

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上図は、羽生二冠が▲3一竜と、竜で銀を取ったところ。
先手も飛車を渡すのは怖いが、これで勝ちになっていると見ている。
この後、佐藤棋王も際どい反撃を試みるが
追い回すだけで、捕まえるには至らなかった。

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午後5時29分、総手数71手。
新手合戦の結果は、羽生二冠に軍配が上がった。
終盤、佐藤棋王に違う迫り方があったようだが
形勢を引っ繰り返すまでにはならないようだ。
・・・ということは、▲9六角に対する△5三玉では、苦しいということなのかもしれない。
とはいえ、佐藤棋王がこの結論に納得する筈もなく
近いうちに、新しい対策を披露してくれるだろう。
そしてこの勝利で、羽生二冠は棋王位奪取に王手を掛けた。
次局で決めて、復活の狼煙を上げるか?
はたまた佐藤棋王が意地を見せ、タイスコアに持ち込むか?
注目の第4局は、3月19日(水)に、東京都渋谷区の「東京将棋会館」で行われる。
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2008/2/27

善戦マンでは・・・  プロ将棋鑑賞会

2月27日・28日と、神奈川県箱根町の「龍宮殿」において
第57期王将戦第5局が行われた。

「久保利明八段(1勝3敗)」VS「羽生善治王将(3勝1敗)」

前局の完敗で、カド番に追い詰められてしまった久保八段。
せめてもう一太刀浴びせたいが、残った武器は第3局で使った四間飛車のみ。
その先手四間飛車に命運を託すしかなかった。
対して羽生王将は、居飛車穴熊の選択肢もあっただろうが
5年振りとなる急戦鷺宮定跡を採用する余裕を見せた。
この戦型は振飛車の対策が進み、なかなか居飛車良しの変化が出て来ない。
しかし羽生王将ならではの踏み込みを見せ、局面を打開していく。

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それが上図の△7六歩で、この順ならば飛車と銀桂の交換は必然である。
しかし先手側が良さそうに見えるが、実際に優勢を確立するとなると難しそうだ。
羽生王将はこのあと飛車を入手するが、らしくないミスで先手玉頭に厚みを作られ
次第に形勢は、久保八段へ傾いていく。
そして互いに秘術を尽くし、いよいよ問題の最終盤に突入する。

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上図は、羽生王将が△7四桂と王手を掛けた局面。
先手の正解手は、ただ一つ。
久保八段は▲7五玉と逃げてしまい、絶好の△6四金を喰らいトン死してしまった。

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唯一の逃げ道は▲7六玉だったのだが、それで先手の勝ちだったかと云うと
話はそう簡単ではなかった。
▲7六玉には△8六飛〜△6五桂以下の順があり
まだ、ひと山もふた山もあったのだ。

午後7時2分、総手数112手。
久保八段のトン死で、第57期王将戦は幕を閉じた。
シリーズを通して感じられたことは、羽生王将の余裕である。
それは「貫禄」と云い直すことも出来よう。
それが羽生流とは云え、久保八段の振飛車に対して
いろいろな戦型を試しているあたりに、それが見え隠れしている。
逆に久保八段がいいところまで行っているのに、勝ちに結び付かないのは
羽生王将の掌の上で、遊ばされている印象である。
残念ながら、それは対戦成績からも推し量れるし
また、それが羽生王将との実力差なのかもしれない。
華麗な捌きや驚異的な粘りの他に、何か身に付けないと
現状では、打倒羽生の旗印は掲げられないだろう。
今後の久保八段の精進に、期待である。
羽生王将は、これで王将戦4連覇となった。
一時よりタイトル数が減って限界説も流れたが、依然衰えは感じさせない。
まだまだ「羽生の時代」は、続きそうである。
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2008/2/25

一瞬の空白  プロ将棋鑑賞会

先日の2月23日(土)に、石川県金沢市の「北国新聞会館」において
第33期棋王戦第2局が行われた。

「佐藤康光棋王(0勝1敗)」VS「羽生善治二冠(1勝0敗)」

第1局を熱戦の末、勝利した羽生二冠。
この人の凄いところは盤上の技術はもちろん、タイトル戦の大舞台で
研究テーマとなる局面を用いる、度胸の良さである。
本局は先日、先手側を持って久保利明八段に新手を繰り出し快勝した
ゴキゲン中飛車(後手側)をあえて採用。
佐藤棋王に「私の研究範囲に飛び込んできますか」と問うている。
それに対して警戒したのか、それとも怯んだのか?
佐藤棋王は超急戦の順には踏み込まず、もうひとつの研究テーマである
「佐藤流」の陣立てを採用した。
序盤の駆け引きは、どうやら羽生二冠がポイントを上げたようである。

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上図は、お互いに駒組みを進め
佐藤棋王が△8五桂 ▲同桂 △8四歩 の筋を警戒して
▲8六銀と、力強く立ったところである。
それに対して羽生二冠は、△5五銀〜△4四角と6筋から攻めを開始した。
また佐藤棋王も強気に応対して、激しい玉頭での局地戦となった。

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先手と後手では、玉の固さが雲泥の差だが
図の△7五桂が先手の急所を突いた一手で、この手で後手の勝勢がハッキリした。
しかし・・・「好事魔多し」とはよく云ったもので
何故かここから、羽生二冠の指し手が乱れてしまうのだ。
上図以下 ▲7六銀 △8七歩 と指したが、△8七歩では△8五金が正解で
これならば難解な終盤戦にはならずに済んだのだ。
また手の流れが悪い方向に進み出すと、なかなか止めることが出来ない。
そして秒読みの中で指された124手目の△8七銀が、敗着となってしまった。
これに対して▲同金と取られても先手玉は詰まず、また銀を渡したことで
逆に後手玉が詰むようになってしまったからである。

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午後7時25分、総手数133手。
投了図以下は、何手か王手は掛かるが先手玉は詰まず、羽生二冠の投了となった。

これで双方の星は、1勝1敗のタイになった。
佐藤棋王にとって本局は、羽生二冠が自滅しただけなので
勝った気はしないだろうが、形勢判断の難しい名局であったと云えるだろう。
またこのシリーズは、まだ2局しか行われていないが、名勝負のシリーズになる予感がする。
第3局3月8日(土)に、新潟県新潟市の「ホテルイタリア軒」で行われる。
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2008/2/20

打ち砕かれた期待  プロ将棋鑑賞会

2月19日・20日と、島根県大田市の「さんべ荘」において
第57期王将戦第4局が行われた。

「羽生善治王将(2勝1敗)」VS「久保利明八段(1勝2敗)」

前局、羽生王将のミスからとはいえ、久々の快勝譜を残した久保八段。
2日制のタイトル戦にも、慣れてきたことだろうし
「さぁ、ここからが本番だ」という、期待も高まろうというものだ。
逆に羽生王将にとっては、星勘定の上でもあまり痛い負けとは云えず
平常心で、この一局に集中してくることだろう。
久保八段にとっては正念場となる本局は、やはりゴキゲン中飛車の採用となった。
それに対して、羽生王将は第2局の超急戦とは趣向を変え
角を交換して、佐藤流の陣立てを採った。

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図の局面は▲3一角が見えているので、久保八段も慎重に読みを入れて
着手したのだが、羽生王将は長考の末、それでも▲3一角と踏み込んで来た。
久保八段としては、駒得しても飛車を侵入されれば負けなので
取ったばかりの角を惜しげもなく自陣に放ち、押さえ込みに掛かる。
しかし羽生王将は慌てず騒がず自玉を固め、チャンスがくるのをジッと待っている。
そして久保八段の動きに合わせ、カウンターパンチを放った。

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上図は後手の△4九飛に、当りになっていた銀を▲3七銀と引いた局面。
羽生王将は、それまで我慢を重ねていた久保八段を
この一手で、落胆させてしまった。
この手の狙いは、次に何を指されても▲4八飛(△4一金を狙っている)で
これがすこぶる厳しい。
捌きのアーティストのお株を奪うかのような、羽生王将の見事な捌きっぷりであった。

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午後5時13分、総手数113手。
▲3七銀以降は、久保八段側に見せ場はなく
羽生王将は俗手ながら、着実な寄せで圧倒した。

これでカド番になってしまった久保八段。
しかも対羽生戦(最近10局中)は1勝9敗と、全くと云っていいほど勝てていない。
前局の快勝で、流れが変わったかと思ったのだが
事は単に、相性の問題だけではなさそうだ。
このままズルズル敗れてしまうのか、それとも次局で意地を見せるのか。

第5局2月27・28日に、神奈川東箱根町の「龍宮殿」で行われる。
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2008/2/13

名優同士の競演  プロ将棋鑑賞会

本日、2月13日京都府京都市の「グランドプリンスホテル京都」において
第33期棋王戦第1局が行われた。

「羽生善治二冠(0勝0敗)」VS「佐藤康光棋王(0勝0敗)」

この2人の対局は、これで実に129局目となり
手の内を知り尽くした相手と云っても、過言ではない。
しかし意外にも勝敗は、羽生二冠が85勝と大きく勝ち越している。
そして羽生二冠は過去に棋王位を13期保持しており、相性がよい棋戦とも云える。
しかし佐藤棋王としては初防衛戦でもあり、過去の記録など気にせず
この一戦に集中したいところだろう。
戦型は佐藤棋王が、一手損角換りに誘導し
双方一歩も引かない、激しい戦いに突入していく。

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図は△8四桂の銀取りに、▲6五銀としたところ。
勿論、取るのは毒まんじゅうで、▲6四角で痺れることになる。
残念ながら王手飛車は実現しなかったが、飛車を手に入れた羽生二冠は
手筋手筋で、後手玉に迫っていく。
しかし、佐藤棋王も負けてはいない。
巧みな返し技を用意して、簡単には土俵を割ろうとはしないのだ。

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数手前の△7六香が曲者で、図の△2二角逆王手になるようにしていたのだ。
この後、羽生二冠は執拗に粘る佐藤棋王を、歩頭の馬捨ての鬼手などを
織り交ぜながら徐々に網を絞り、最後は即詰みに討ち取った。

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午後8時25分、総手数187手。
▲3三金からは、簡単な11手詰めである。

かなりの長手数になったが、それだけ力が入った将棋だったと云えるだろう。
佐藤棋王の初防衛戦に賭ける執念を感じたし、またそれを巧みな技で凌駕した
羽生二冠の迫力も感じた。
1日制5番勝負とは云え、中身の濃い素晴らしいシリーズになりそうな予感である。
早く次の将棋が見たい(笑)第2局
2月23日に、石川県金沢市の「北国新聞会館」で行われる。
羽生二冠は、王将戦の防衛戦を3日前に行っていて
その兼ね合いが、勝負にどう影響するのだろうか?
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