2008/6/21

心の隙間  プロ将棋鑑賞会

本日、6月21日(土)に、愛知県豊田市の「ホテルフォレスタ」において
第79期棋聖戦第2局が行われた。

「佐藤康光棋聖(1勝0敗)」VS「羽生善治三冠(0勝1敗)」

もうご存じだと思うが、4日前に羽生二冠は森内名人を下し
悲願の永世名人位を獲得して、羽生三冠となっている。
悲願を達成した後の人間の心理というものは、どうなるものなのだろうか。
羽生三冠ほどの男である。
ポッカリ穴が開いてしまった、なんてことはないと思うのだが・・・。
そこへ敢然と立ちはだかるのが、佐藤棋聖である。
得意の一日制のタイトル戦、5番勝負の緒戦で快勝とノリに乗っている。
そんな相手に微妙な精神状態、心の拠り所は佐藤棋聖との相性だけか。
今回、後手番の羽生三冠は、今密かに流行中の4手目3三角戦法を採用した。
それに対して佐藤棋聖は穴熊へ、羽生三冠は飛車を振って持久戦へと突入した。
しかし角を手持ちにしての持久戦は、陣形的に云えば後手に理がある。
果たして、佐藤棋聖は誘いの隙か、或いは本当の隙なのか
角を打たせるという、大胆な作戦に出た。

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上図は、佐藤棋聖が▲5七銀と隙を見せたところ。
当然、羽生三冠は△4七角と角を打ちこみ、抑え込みに掛る。
焦点は先手が捌くか、後手が抑え込むかの一点になった。
佐藤棋聖とすれば、羽生三冠の抑え込みを掻い潜れば勝ちとなるので
あちこちに火種を撒き散らし、必死の手作りである。
羽生三冠の方はと云えば、成駒や金を駆使して、こちらも必死の抑え込みである。
そして一目、それが功を奏したかに見えたのだが・・・。

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先手の全ての大駒が当たっていて、羽生三冠の苦労が報われたかに見えたが
ここで冷静に▲4九飛が好手で、△5五金▲3四角とされてみると
抑え込みの裏に回られる格好となり、後手の目論見は崩壊してしまった。
こうなると、後手はもういけない。
抑え込みにいった駒が上ずってしまって、守りの役には立たないのだ。

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午後6時49分、総手数99手。

穴熊は手つかずの上、自玉は急所に手がついていては
流石の羽生三冠でも、粘る気が起きないのだろう。
▲7四歩を見て、無念の投了となった。
本局は、羽生三冠の不出来(抑え込みの方針がどうだったか)よりも
佐藤棋聖の剛腕を讃えるべきだろう。
それほど、この将棋は佐藤棋聖らしさが存分に出ていて
佐藤棋聖の代表局と云えるかもしれない。
さて、これで羽生三冠も名人戦熱から醒めて、ピリッとして来るのか。
それとも佐藤棋聖が勢いのまま、一気に土俵の外に持って行ってしまうのか。

羽生三冠のカド番となる第3局は、7月2日(水)
兵庫県洲本市の「ホテルニューアワジ」で行われる。
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2008/6/17

前人未到へのカウントダウン  プロ将棋鑑賞会

昨日、6月16日(月)から山形県天童市の「天童ホテル」において
第66期名人戦第6局が行われた。

「羽生善治二冠(3勝2敗)」VS「森内俊之名人(2勝3敗)」

現在、同時進行で棋聖戦5番勝負が、羽生・佐藤(康)の間で行われているが
この対戦は、何が飛び出すかわからない面白さがある。
しかし、羽生・森内両棋士の番勝負は、お互い何か示し合わせたような
テーマが存在するような、気がしてならないのである。
そう、まるでお互いが持ち寄った共通のテーマを、盤上で研究するかのように・・・。
今回は、それが相掛り引飛車棒銀のようなのである。
しかし将棋は千変万化とは、よく云ったもので
同じ戦法でも指す人間が異なると、指し方も異なってくるもの。
今回、先手番を持った羽生二冠は、▲6六角と軽く捌きに出た。

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飛車取りであるこの角は、△同角と取るのが普通であるが
森内名人の指し手は、意表を突く△8二飛であった。
これは△3四歩を間接的に守っていた、飛車が下がることで
▲4五銀などの、攻めを誘発することになる。
森内名人の受けは、「鉄板の受け」と呼ばれているが
その受けで、羽生二冠の攻めを跳ね返してやると云うのだ。
これは積極的な受けであり、第3局から一貫している方針のままである。
勿論、来いと云われて引き下がる羽生二冠ではない。
コチラも積極的に打って出て、焦点は2三の地点の攻防となった。
しかし、お互いに自陣に手放した角の働きの差が、形勢の差となって表れてきた。
やはり羽生二冠の放った角の方が、敵玉を直射していて
潜在能力が高かったのだ。

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図は先手が攻めの銀を捌いたところだが、ここでは飛車を引いても十分だが
羽生二冠は、激しく決めに出た。

▲5三桂成

成桂を取る手は、▲3四飛から飛車交換を迫られてダメなので
森内名人は飛車の方を取ったが、▲5二成桂と金を取って羽生二冠の勝勢となった。
森内名人は働かなかった角の顔を立てるような、奇手△6五角を繰り出したが
一度ついた差は、ついに縮まる事はなかった。

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午後8時10分、総手数105手。
△4四玉と逃げても、▲7二角成で受けがない上に
先手玉に詰みがないのでは、投了も止むを得ない。
そして、ここに羽生善治19世名人が誕生したのである。
これだけの棋士が名人位だけには縁がなく、周りは随分ヤキモキしたものである(笑)。
しかし鬼門の永世名人位を獲得して、これで残すは永世竜王位のみ。
その竜王戦も決勝トーナメントに進んでいるので、年内の永世七冠も夢ではない。
前人未到へのカウントダウンは、いよいよ始まったのだ。
そして永世竜王位はもとより、渡辺−羽生の七番勝負を見たいファンも多いだろう。
この勢いで、是非実現して欲しいところである。
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2008/6/11

嵐の前の静けさ  プロ将棋鑑賞会

本日、6月11日(水)に、新潟県新潟市の「高島屋」において
第79期棋聖戦第1局が行われた。

「羽生善治二冠(0勝0敗)」VS「佐藤康光棋聖(0勝0敗)」

「また、この組み合わせか!」と云いたくなってしまうのだが
6期連続防衛中の佐藤棋聖に、羽生二冠が挑戦の名乗りを挙げた。
現在進行中の名人戦(森内−羽生)の組み合わせですら、96局と大変なものだが
それが霞んでしまうくらい、この2人の対局は群を抜いている。
この対局で、なんと134局となるのである。
名勝負と云われた、谷川浩司九段との対局が157局
これを抜くのも、時間の問題であろう。
残念ながら勝敗は、羽生二冠がダブルスコアに近い勝ち方をしているが
直近10局では、佐藤棋聖が6勝4敗と気を吐いている。
そして棋王戦の逆転防衛も、記憶に新しいところである。
さらにこの棋聖戦は、佐藤棋聖が最も得意としている(?)1日制のタイトル戦である。
さて、その辺が追い風となって佐藤棋聖に吹くか。
後手番の佐藤棋聖は、一手損角換りに誘導する。

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上図は、後手が△4五銀と閉所に追い込まれそうな馬を、活用しようとしたところ。
この△4五銀までは、佐藤棋聖は経験済みで
ここから羽生二冠が▲2七角(前例は▲1五歩)として、未知の戦いに突入した。
ここからは互いに馬と角をどう使うか、どう封じ込めるかが焦点となる。

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上図は▲7七銀△4二玉▲7九玉と3手、玉の安定に手を費やしたところ。
まさに1筋から4筋に仕掛けられた、爆弾が破裂する前の
「嵐の前の静けさ」といったところだ。
数手後、やはり佐藤棋聖が△3四銀と局面を解しに掛り、将棋が動いた。
羽生二冠は中段飛車を駆使して攻めようとするが、佐藤棋聖も手を作る隙を与えない。
結局は、馬を中心に飛車を抑え込みにいった佐藤棋聖が有利になり
そのまま押し切る格好になった。

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午後7時16分、総手数114手。
攻めの手立てがない上に、自陣は傷だらけでは気力が萎えるのも仕方なく
羽生二冠、無念の投了となった。
これで佐藤棋聖は、棋聖戦7連覇に向けて好発進した。
棋聖戦は5番勝負の短期決戦、初戦しかも後手番での勝利は
かなり好材料となるだろう。
羽生二冠としては、名人戦(2日制)の最中の棋聖戦の挑戦で
勝手が違ったのかもしれない。
しかし何と云っても、そこは羽生二冠。
次までには、巧く調整してくるに違いない。

さて、その注目の第2局は、6月21日(土)
愛知県豊田市の「ホテルフォレスタ」で行われる。
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2008/6/6

名人の意地  プロ将棋鑑賞会

昨日、6月5日(木)から山梨県甲府市の「常磐ホテル」において
第66期名人戦第5局が行われた。

「森内俊之名人(1勝3敗)」VS「羽生善治二冠(3勝1敗)」

第1局こそ相手の暴発を巧く咎めて勝利したが、その後は立て続けに星を落とし
気が付いてみると、後が無くなっていた森内名人。
ただ第2局を、消極的な指し手で失敗したのを境に
手が伸びてきているのが、唯一の救いだろうか。
まだ、その「手の伸び」が勝利に結び付いてはいないが
対戦相手の羽生二冠にしてみれば、脅威であろう。
星的には羽生二冠が圧倒的有利だが、先日の棋王戦の例もあり
あと一勝の大変さは、身に染みているはずだ。
「早い内に決めたい、森内名人が息を吹き返す前に・・・」
こう、思っているのかもしれない。
相矢倉が有力視された中、森内名人は相掛り引飛車棒銀を採用した。
第3局で大ポカにより負けはしたが、手応えを感じ取ったのかもしれない。

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本局の森内名人も、やはり積極的であった。
持久戦へと進めるかに見えたのだが、敵の不備を嗅ぎ付けたか
5筋から積極的に仕掛けていった。
羽生二冠も、気圧されてはいかんと強気の応対だが
森内名人の指し手は、グングン加速していく。
そして積極的な指し手は、森内名人優勢となって実を結んでいく事になる。

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図は羽生二冠の△3九角の金取りに、森内名人が▲6七歩と手堅く受けたところ。
6筋に歩が使えなくなるが、自陣の憂いを無くす「鉄板の受け」である。
こうされてみると、次の▲7五飛▲5八飛〜▲3八飛が受からない。
羽生二冠も激しく追撃するが、今度ばかりは差は縮まらない。
森内名人が的確に寄せて、カド番を一つ凌いだ。

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午後8時34分、総手数109手。
手駒があるとはいえ先手玉に詰みはなく、投了は止むを得ない。
積極的に指すようになってから、ようやく勝ち星に結び付いた森内名人。
前期名人戦も2連敗から3連勝と爆発しており、もしかしたらこの1勝は
1勝以上の価値を、持つ事になるのかもしれない。
対して、ここで決めたかったとは云え、依然と「あと1勝」の羽生二冠。
次の先手番が、本当の勝負かもしれない。

注目の第6局は、6月16日(月)・17日(火)
山形県天童市の「天童ホテル」で行われる。
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2008/5/21

神経を擦り減らす消耗戦  プロ将棋鑑賞会

昨日、5月20日(火)から
愛知県名古屋市の「ウェスティン・ナゴヤキャッスル」において
第66期名人戦第4局が行われた。

「羽生善治二冠(2勝1敗)」VS「森内俊之名人(1勝2敗)」

名人戦史上に残る大ポカを演じてしまい、星の先行を許してしまった森内名人。
昨年に続く大失態だが、気持ちの切り替えが旨くいくかが本局のポイントになる。
対して一つの課題であった後手番ブレイクが、相手のミスに助けられる形ではあるが
成就したということは、羽生二冠の念願が一歩近づくことになった。
そして後手番ブレイクのお返しを狙う森内名人は、角交換向飛車を採用し
羽生二冠を挑発する。
そこへ羽生二冠も、挑発に乗るような格好で乱戦に突入し
序盤から荒れ模様の将棋になった。

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上図は森内名人が4三にいた金をグイッと上がったところ。
検討陣は、このまま矢倉を目指すという予想をしていたらしいが
その予想を裏切る、力強い金上がりである。
「名人に定跡なし」とは、昔から云われていることだが
正に、それを地で行っている感がある。
そして、ここから相手の手を殺し合う、ピリピリとした神経戦が始まるのだ。
睨み合いの神経戦は、先に音を上げて手を出した方が痛い目に遇う事が多い。
この辺りは、剣の達人同士の立ち合いに近いものがあるだろう。
2日目の夕食休憩までに、まだ55手しか進まない超スローペース。
持ち時間は、お互いに一時間少々。
果たして、先に手を出したのは森内名人の方であった。

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上図の△3五歩が、森内名人の言葉を借りれば「暴発」の一手で
成算が持てないまま、フラフラと指してしまったそうだ。
達人同士の将棋である。
そのような手はすぐ咎められ、森内名人も修正が利かないまま
終局までズルズル行ってしまった。
森内名人は、最初の一太刀でバッサリ斬られてしまったのである。

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午後8時57分、総手数95手。
ついに羽生二冠が、名人位奪取に王手を掛けた。
19世名人の称号が、そぐそこである。
勝負の流れを考えると、次で決めたいところだろう。
これで崖っぷちに立たされたのは、森内名人である。
大ポカ・神経戦での敗戦は、ダメージが大きい。
しかし、次は先手番である。
ここを踏ん張れば、まだ望みは出て来るのである。

注目の第5局は、6月5日(木)・6日(金)
山梨県甲府市の「常磐ホテル」で行われる。

果たして、永世名人の誕生が見られるのであろうか?
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