どんよりとした厚い雲に覆われていたのですが、生徒の登校時間には冷たい雨が降り始めました。昼過ぎには弱まるとの予報でしたが、シトシトと降り続いています。気温も上がらずに、一日肌寒いままでしたね。生徒たちの丸まった背中が、そのことをよく物語っていました。
さて今日はケインです。ケインは中学から本校で、中学時代は剣道部でした。この点はユウタロウと一緒です。ユウタロウは、中学の剣道部が一段落した、わりと早い段階で高校ではうちに来るらしいとの情報がありました。一方、ケインに関してはそうした事前の情報がなかったこともあり、私の個人的な感想ではありますが、入部が意外な感じがしたのを覚えています。
入部当初のケインは、体力的にはかなり厳しい状況だったようです。おそらく剣道部だった頃には、あまり走り込みをしてこなかったためでしょう。ラグビーの場合、走ります、ボールを扱います、体をぶつけますといったことが、基本動作になります。この基本動作を覚え、身につけるだけでも、かなり難しいことです。ケインはフォワードでしたからそこまでですが、バックスになれば、ここにさらに蹴ります、が加わるわけです。他種目から移行する人たちにとって、ラグビーは決して易しいスポーツではないのでしょうね。私自身も高校1年の頃は、とにかく練習についていくのがやっと…でしたからね。その苦労は分かります。
そんな厳しく、苦しい状況でしたが、本人の心の内はともかくとして、グランドでの姿としてはあきらめずに、粘り強く取り組む姿勢がケインにはありました。中学から本校に在学する生徒(部員)は、良くも悪くも中学時代のイメージが先行しがちです。注意しないと、私たちはその先入観で生徒(部員)と向き合ってしまうこともあります。ですが、ラグビーを選んだ時点で、多くの生徒は自分の中の何かを変えたいのだと、そう判断して私たちは入部を認めます。ケインもそんな一人だったと勝手に合点しています。
私は、ケインの声が大好きなのです。特に大きな声を出すときに、ワントーン上がる、あの声が堪りません。美声だと、断言できるでしょう。そして高めの声は、よく響くのです。厳しい局面で、あの美声が仲間を鼓舞したことは一度や二度ではないはずです。喉を潰して悪くすることはできても、澄み渡る声はトレーニングで身につくものではありません。あの美声を維持して、大学グランドでも聞けることを期待しています。そしてギリシャ劇では、また違った雰囲気のケインの声がありましたよね。王としての威厳を表現していました。どちらにせよ、ケインの声だと一度で分かる美しく、ときに力強いものでした。
夏以降は、腰に爆弾を抱えて、なかなかつらい時期もあったはずです。かつての先輩たち同様に、ケインが本物になった証として、痛い顔をしなくなりました。厳しいときに自身を鼓舞するように、一声吠えてスクラムを組む姿は印象的でした。だからこそ引退後に体育の時間でこけて、松葉杖はないだろう…と思うわけです。
これまた先輩たちと同様に、論文と読書に苦しんでいます。自らが選んだ選択ですから、ここも泣き言を言わずにやり遂げてほしいものです。

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