ゴジラはどこへ
野球はそろそろ終盤を迎えています。スポーツそれぞれにシーズンがありますが、野球は終わりですね。国内では日本シリーズで、メジャーリーグではワールドシリーズがピリオドを打ちました。その原動力となったのが、松井秀喜です。数年前の手首のケガから、膝の手術などが重なり、ここのところ活躍しているとは言い難い状況でした。今シーズンも守備にはつかず、指名打者(DH)としての起用にとどまっていました。そこでシーズン中盤からは、来シーズンはニューヨークにはとどまっていないだろうといわれていたのです。四年契約の最終年でもあり、その報酬には見合っていないと判断されていたのかもしれません。それだけを出すのなら、他の選手を獲得できる可能性を模索されてもいたわけです。成績がすべての世界ですから、仕方のない部分もあります。
日本的な労働体系の中に、年功序列と終身雇用制というものがあります。これは年齢が上がれば給料や役職が上がり、企業が定めた定年まで雇用されるシステムのことです。こうしたシステムというものは、必ず利点と問題点があるもので、労働意欲に関しては問題点を残しながら、身分が保証される利点を持っていたわけです。それでもプロスポーツ選手の場合は、結果がすべてという意味において、これらは当てはまりませんでした。ですから年俸制で、出来高払いということが、その世界では当たり前のようにいわれるわけです。実績を積み重ねれば、時には複数年契約もありますが、ほとんどはその年その年に実績と可能性を査定されて、契約となるわけです。松井秀喜も四年契約を結んだわけですが、その四年間で次を期待させるだけの成績を残せたとはいえないわけです。
そんな中で、ワールドシリーズです。ニューヨークではシーズン同様に指名打者として打席に立てますが、相手スタジアムではそれが許されず、代打としてしか起用されないわけです。それでもかぎられた打席で結果を残すことができました。特に優勝を決めた最終戦では、ヤンキースの上げた七点のうちの六点を彼のバットがたたき出したのです。先制のツーランに続き、二打席連続で二点タイムリーです。この優勝を決める一戦が評価されたのでしょう、彼はこのワールドシリーズの最優秀選手(いわゆるMVP)に選ばれたのです。苦しんだ今シーズンを考えても、優勝に加えて二重の喜びといえそうです。
とにかく日本人としては初受賞です。これでニューヨークの野球ファンの心をわしづかみにし、契約問題が一気に好転する可能性が出てきました。少なくともファンは松井の残留を望んでいるはずです。ワールドシリーズのMVPをそんなにたやすく手放す球団を許さない空気があります。本人も来期もヤンキースでのプレイを望んでいるのですから、結果を残した彼が、それを実現することを期待しますね。
プロ選手の場合、やはり周囲の評価は無視できません。しかも彼のように高給取りになれば、そのシーズンでの活躍は義務でもあるわけです。それが果たされなければ、ファンからは愛想を尽かされ、首脳部からは契約を破棄されることになるわけです。そうならないためには、常に努力をして結果を出さねばならないのです。これは例外なく誰にでも当てはまるわけで、かつての日本人メジャーリーガーの草分けとなった野茂投手もそうでした。
松井選手のニックネームはゴジラです。このゴジラがニューヨークに残留できるかどうかは、まだまだ予断を許さない状況ではありますが、彼はニューヨーク残留を望んでいますし、走でなくともまだアメリカでのプレイを希望しています。徐々にペースの上がってきたことを考慮して、来シーズンもアメリカで、しかもピンストライプを来ていることを私も期待しています。一説には「記録のイチロー、記憶の松井」とも称されています。彼の伝説はまだまだ続くはずです。

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