棚から本マグロ
昨日の「文化の日」にあわせて、各分野で功績のあった人たちへの褒章を行っています。今年は六七八人、二四団体に贈られました。分野によってもらえる褒賞が色分けされています。その道一筋に励んだ人には黄綬褒章、公益利益に貢献した人は藍綬褒章、人命救助に尽力した人には紅綬褒章などとなっているのです。どんな人が選ばれているのかといえば、たとえば黄綬褒章の場合、新幹線の先頭車両で丸みを帯びた「団子鼻」部分をハンマーで打ち出す板金工の六四歳の方、藍綬褒章などは「ドラゴンクエスト」シリーズで「ロールプレイングゲーム」の草分けとなったゲームソフト会社などに贈られるのです。そして芸術やスポーツ、学問で功績を残した人に贈られるのが紫綬褒章です。この紫綬褒章に歌手の中島みゆきさんが選ばれました。中島みゆきさんはご存じですか。あなたのご両親たちの方が詳しく知っていたり、ファンだったりするかもしれませんね。「時代」という曲が有名ですかね。NHKの『プロジェクトX』の主題歌「地上の星」なども有名ですよね。彼女の曲は比較的シリアスなものが多いのですが、語りなどはとてもユーモアです。今回の紫綬褒章に選ばれた際のコメントも次のようなものでした。
思いがけずうれしいことの表現に「棚からぼたもち」と申しますが、今の私の気持ちは、ぼたもちどころではございません。「棚から本マグロ」。これくらいの驚きでございます。
ふつう、何かをいただけそうな場合には、たちどころに受け取るのは少々はしたないので、まぁ二度くらいは辞退して、それでもとおっしゃるならちょうだいするのが奥ゆかしいのでございましょうが、このたびのような褒章になりますと、到底「ふつう」ではないことですので、辞退なんかしたら二度と機会はないかもと思い、即座に「いただきます!」と、お返事をしてしまいました。
お世話になってきたたくさんの皆さまに、心から感謝申し上げ、これを励みに、より一層、元気いっぱい歌い続けていきたいと思います。 彼女がラジオのディスクジョッキーを務めていた番組などもとてもユーモアにあふれていて、人気がありました。その一方で歌はシリアスなものが少なくないですよね。前述の「地上の星」にしても、トキオに提供した「宙船(そらふね)」にしても、生きる姿勢のようなものを歌っています。もっとさかのぼると哲学的と称するのがいいのでしょうか、「生きていてもいいですか」というアルバムタイトルの中には「うらみ・ます」という曲などがあるのです。ラジオからの明るい声とは対照的な歌声と歌詞なのです。
最近は松田聖子さんと一緒に出演しているフジフィルムの化粧品のコマーシャルに出演していますよね。白のイメージを強調するためか、結婚式のシチュエーションなのですよね。白無垢姿の彼女が、同じく真っ白な大きな犬に引っ張られているというものです。あそこでも「照れますな」と明るく姿がありますね。
いつでも、どこでも同じような顔をして、過ごしているわけではないのは誰でも同じなのでしょう。彼女の歌手としての顔と、それ以外の顔は大きく異なるのかもしれません。そしてそのどちらも彼女です。どちらかだけを見て、一方を否定してしまうのは変ですよね。いくつもの側面を抱えて、私たちは私たちとして存在する、多面体として私なわけです。どこでどんな顔を見せるのかは、あなた次第ですよね。それでも一つだけ願うのは、どこかの場所ではユーモアを忘れずにいてください。ユーモアはhumourと綴ると分かりますが、humanを抱えていて、とても人間らしい行為です。人間性としてのユーモア、それが自身も、周囲をも温かく包むことになります。ユーモアを抱えていきましょう。

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