三百倍を超える抽選
月曜日に元人気アイドルの覚醒剤使用に関する裁判が行われました。一般的な裁判の場合、その裁判を傍聴することができますが、傍聴希望が多数の場合には抽選になります。その抽選も裁判所内で行うのが一般的なのですが、傍聴希望者が多数になることが今回のように予想される場合には抽選場所が変更になります。今回も日比谷公園での抽選になりました。傍聴希望者の記録は、あなたが物心つくかどうかという頃の平成八年のオウム真理教の教祖の裁判で一万二千人なのですが、今回は六千六百人で二番目になるようです。それでも傍聴席は二十席ですから、倍率は三百倍を超えます。この倍率は一番の記録になるようです。それだけ関心が高いことを物語ると同時に、この事件が世間に与えた影響も大きかったことになりますね。
もちろんこの元アイドルのことを、あなたはあまりよくは知らないでしょう。年齢的にいっても、私の世代が夢中になった中心でしょう。今の中川翔子さんのような存在で、当時は「のりピー語」といわれていました。アイドルとしては一世を風靡していましたし、日本ばかりでなくアジアでも人気がありました。清楚なイメージがついて回りました。このイメージはもちろん本人の努力もありますが、それ以上に周囲によって作られたものです。それが本人の実像と違うことは多分に考えられます。だからこそ彼女の結婚の際にも驚かされることになるのです。ドラえもんの静香ちゃんのなのかなぁと漠然と思ったりするわけです。つまりトイレに行くこともなければ、おならもしないようなそんな存在なのかもしれなかったのです。
だからこそ今回の事件も私たちには衝撃だったわけです。芸能界の中ではすでに蔓延とまではいわないまでも、広がっているのではないかという憶測があったはずです。そして失礼な言い方を承知でするのなら、そういうものに手を出してしまいそうな人たちというのも、これまたイメージのものとして私たちの中にはいたのかもしれません。その中に彼女の夫は仮にあったとしても、彼女自身は「まさか」という感じだったわけです。だから夫が職務質問された後に連行された直後に姿を消したときには、どちらかといえば周囲は同情的な見方をしていたわけです。それがある瞬間から容疑者へと変わるわけです。このギャップを飛び越えるのに、どうしても戸惑いがあったのです。
おそらく多くの、彼女を知る人が、法廷で何を彼女が語るのかを知りたかったのかもしれません。彼女につきまとうイメージからほど遠い事件の真相が、どのように語られるのかに注目が集まった結果として、あの人数だったのかもしれません。そこで語られたことが、聴いた人たちにとってどの程度の説得力を持っていたのかは、疑問の残るところです。どこまでも計算されて、まるでシナリオを読んでいるかのような印象を与えていたことが、今後の彼女にどのような影響を及ぼすのか、懸念されるところです。
一方で三百倍の倍率を当てた人たちの心情にも思いをいたしたりもします。だって三百倍の確率のものを当てることなんて、滅多にないですよね。もしかするとここでその人たちは一生分の運を使い果たしてしまったのではないかと、心配してしまうほどです。三百倍と聞いて、あなたはどうしますか。それでもその抽選を選びますか。それとも倍率の高さにおののいて、やめてしまいますか。三百人に一人しか選ばれないと思うのか、三百人に一人は選ばれると思うのか、これから受験に向かうあなたには大切な発想です。どうしても受かりたい大学があるのなら、後者であるべきですね。どんなに低い確率でも、間違いなくそれを引き当てる人がいるわけです。その人になるためには、思いを強くすることと、そのための実力をつけて、運を味方につけましょう。自分は大丈夫と胸を張れるようにね。

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