最近読んだ本の中でも特に面白かった一冊。
アリと共生する「好蟻性昆虫」の世界を紹介した本。
ひょんなことからアリの巣に潜む小さな昆虫を見つけた分類学者が、専門とするハネカクシを次々と記載しながら他分野にも手を広げ、あれよあれよという間に巻き込まれ突き進んでいくジェットコースター生物書と言える。
とにかく、好奇心のみに殉ずるがごとき著者の視点とセンスが好き。
「机上の空論」でもなく、座学から逃げるための方便でしかない「現場主義」とも違う、点を繋げて線に、それが面になっていくことで広がる果てしない多様性の地平。
ゼネラルな興味を持ち続けてきた人の強みを見た思いがする。
とくに生き物好きの高校生には強力にお勧めしたい。色々と勇気づけてくれると思う。高校生の知り合いなんか居ないけど。
東海大学出版会のこのシリーズは楽しい本が多いなホント。
ただ後半、とくに3章は紙面が足りず、もっと読みたい内容が多すぎるのでここはぜひ続編に期待。
なかでも僕が好きなのはアリヅカコオロギだな。
翅のない丸いからだとムチムチの太ももが魅力的な、アリの巣に住む小さなコオロギ。
見た目は可愛いけれど、匂いを偽装することでアリになりすまし、エサをもらい、巣の中で暮らし続ける強者。
まだ研究が進んでいない連中らしいので、これからどんどん面白くなるかも。
僕は許すよ! 可愛いから!
今までアリの巣に共生する昆虫というとアリヅカコオロギやアリスアブ、シジミチョウの幼虫くらいしか知らなかったけど、この本のメインであるハネカクシの仲間にはたくさんの好蟻性種がいて、どれも面白い。
アリの巣というのはよくできた組織で警備も厳しいが、うまく潜り込めたらうまみも大きいんだろうなあ。
ほかにも幼虫に擬態したハエの成虫とか、まあ凄いのが出てくるので読んでみてください。
あと好蟻性昆虫は出てこないけど(アブラムシってどうなんだっけ)、『働かないアリに意義がある!』シリーズもついでによろしくね。
池袋ジュンク堂でのイラスト展でコミックエッセイ版を買うとオリジナル缶バッジが付いてきます。
http://www.junkudo.co.jp/tenpo/shop-ikebukuro.html

1