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2019/7/15  23:17

大岡昇平の「花影」(集英社e文庫)を読んだ  読書人(4.23は本の日)
 昭和の古い小説である。
 大岡昇平先生というと、戦争体験にもとづく「生と死」を扱った戦争文学で有名だが、もともとフランス文学の翻訳、特にスタンダールの小説の紹介者として知られた人で、それの影響を受けた小説も書いているとは聞いていた。

 小金井市の中村研一記念美術館(現はけの森美術館)に行った折、そこの湧水の湧く庭で「武蔵野夫人」のインスピレーションを得たという話を聞き、そういった小説に興味を持っていた。

 その中で「花影」は傑作の一つと言われているとあったので、それで読むことにした。

 昭和に流行した銀座のホステスの恋愛物語である、だが最後に彼女は夜の世界に疲れ自死を選ぶ、戦争で生き残ったのに死ぬこともないのにと思ったが、それが「生と死」を見つめた大岡昇平の真骨頂なのだろう。

 「死のうと思うことと死ぬこととは違う」と、この小説では再三出てくる。

 戦争中に自決の道を選んだ人達と、生き延びようとした人達、その違いは経験からきていると感じた。

 そこが当時評価されたのかもしれない。

 私はこういう小説が苦手だ。

 女にふりまわされる、粋な有閑人ではないからだ。

 銀座は好きだが、映画を見たり本を読んだりするだけ、ホステスと遊ぶお金など持ったことがない。

 赤坂で客を送るホステスを見て、「きれいだな」と思ったこともある。

 朝に帰宅するホステスらしき女の子も見たことがあるけど、自分とは住む世界が違うと思った。

 この小説だと、当時はホステスではなく女給という言い方が普通で、和服がスタンダードだったということだ。

 銀座の古きよき時代を感じた。

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2019/7/15  1:15

「大西郷遺訓(頭山満著 土曜社)」を読み終える  読書人(4.23は本の日)
 海音寺潮五郎先生の「新装版 西郷隆盛」に続き、同じ作家による「赤穂義士」を読み終えたので、西郷南洲遺訓に頭山満が講評をした土曜社の「大西郷遺訓」を読んだ。

 大正時代の本で講評の方が長い本で言葉遣いも穢いが、西郷隆盛に心酔した頭山満の少年のような心がよく出ていた。

 西郷南洲遺訓は簡単なことを書いてあるのだが、原文は謹厳な感じで文語調で難しい、いろいろ含蓄があり注釈がないと難しい。

 この本は文語を青少年でもわかりやすい口語にしてあり、実にわかりやすい好著だと感じた。

 海音寺潮五郎は西郷隆盛は陽明学の人ではないと言ったが、頭山満は西郷隆盛が大塩平八郎の書を愛し譲ってもらい持っていたことを、当時の人から聞いており、陽明学の影響は小さくないことを書いている。

 島津斉彬公は西郷隆盛のことを「独立の気象あり」と言い、ひじょうに才能のある大人物になる男と考えていたが、イデオロギーのとらわれない人だったのではないか?と思う。

 やはり大人物だったのだろうと思う。

 頭山満は戦前の右翼の大立者で、危険人物の印象が強いが、孫文と親交を結ぶなどひじょうに好人物である。

 炭鉱主でその資産を運動に当てていたと言うが、青少年向けの啓発書も書いていたことを知り、好かれた要因がわかるように感じた。

 頭山満のことばに触れること少なく、その怪人物ぶりばかり言われていて辟易していたが、なかなかの好人物だと思った。

 西郷南洲遺訓は「君子はかくあるべき」ということを言っている、葉隠と違い無理な忠節を求めることなく、きわめて自然である。

 こちらの方が親しみやすいし、よき君子になりたいものだと思った。

 こんなくたびれた中年になってもね、少し若返ったような気がしましたよ。

 ただこの本は量の割に少し高いですね、復刊に苦労したせいかもしれないが、長く残り多くの人に知られてほしい本だと思いました。

※驚いた、ebookjapanだと2060円なのに、紙だと文庫で859円でソフトカバーで1028円、kindleだと816円だ・・・ebookjapan価格を間違えたか?

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2019/7/14  23:57

海音寺潮五郎の赤穂義士(講談社)を読み終える  読書人(4.23は本の日)
 昨日「新装版 西郷隆盛」を読み終えたが、そのまま勢いにのって最初の方だけ読んでいた「赤穂義士」を一気に読み終えてしまった。

 正月休みの時に赤穂浪士の関係の本をたくさん読んだので、もういいやと思っていたのですが、海音寺潮五郎先生も書いていたので、何かの折に読もうと思っていた。

 「新装版 西郷隆盛」を読み終え、余勢をかってというところです。

 海音寺潮五郎先生の小説らしく、史伝の体裁をとっており静かな雰囲気だった。

 浅野内匠頭は必ずしも名君ではなく、短気なところがあったと書き、意地を重んじた戦国時代の士道ではなく、元禄時代にさかんになった儒学にもとづいた新しい士道による行動だったと考証している。

 誠に慧眼だと思う。

 しかし今年の正月休みから赤穂浪士についていろいろ読んだが、葉隠の「即座に何はともあれ討ち入るべし」というのは、老人のたわごとだと思う。

 長崎などでおこる喧嘩と違い、刃傷沙汰は勅使を迎えた江戸城中、仮に即座に討ち入るとして大名屋敷は江戸城内といったところ、武装した兵士が白昼堂々動き回れるはずもなく、動けば大名屋敷の兵や、幕府軍による追討となり家中一同皆殺しとなり、お家も断絶、見せしめに赤穂城も破壊されたであろう。

 やはり赤穂義士の、可能な限り礼と法を守り本懐を遂げたことが正しいことだったのだ。

 武士には礼が必要だ、それがなければ士道ではない。

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2019/6/21  2:27

三島由紀夫の作品の電子化が進んで欲しい  読書人(4.23は本の日)
 三島由紀夫の本は電子化がまったく進んでいないようだ、著作権は長男が管理していると聞いているが、応じていないのでしょう。

 ひじょうに残念なことです。

 多くの文学者の名著がすでに電子化されており、もう再び触れることはないと思っていた本に再び出会えた。

 三島由紀夫の作品も読みたいと思ったら、影も形もない。

 三島由紀夫を論じた評論がわずかにあるぐらいです。

 青空文庫で読めるようになるはずだったのですが、著作権が70年に伸びるトンデモ法律が通ってしまったので、不可能になってしまいました。

 電子化が進まなければ、海外でも過去の作家になっていくでしょう。

 もったいないもったいない。

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2019/5/29  21:36

背教者ユリアヌス(辻邦生著 中央公論新社)を読み終えた  読書人(4.23は本の日)
 電子図書を買いだして、過消費にも悩まされますが、本当に多くの本を読めるようになりました。

 「背教者ユリアヌス」は辻邦生の代表作です。

 北杜夫の小説を読んで親友の辻邦生に関心を持ち、「春の戴冠」に続いての大著の読破です。

 背教者ユリアヌスは大学時代から名著として知られていましたが、私には縁がないと思っていました。

 暴君ネロ、背教者ユリアヌス、キリスト教徒からは嫌われていますが、実は大変な名君だったと言われます。

 二人とも哲学を好んだ哲人皇帝でした。

 ユリアヌスは現在のパリのルテティアを本拠地とし、今のパリの基盤を作ったとも言われます。

 ローマ神殿の復興をめざした政策は時代錯誤気味ではあったが、ローマ帝国の伝統的政策ではありました。

 もし五賢帝の時代に生まれていれば、名君としてのみ歴史に名を残したでありましょう。

 ユリアヌスの不幸は亡びつつあるローマ帝国で生を受け、亡びるローマ帝国を守護する役割を担ったことにありました。

 一人優れた人間が生まれてもローマを亡びることは防げない。

 そして亡びるローマ市民もまたユリアヌスに冷たかった。

 しかしルテティア時代に支配したガリア人はユリアヌスを信頼し、彼をローマ皇帝へと押し上げ、ササン朝ペルシアとも戦った。

 若きガリア人たちは、若く純粋な皇帝を愛し忠節を尽くしたのです。

 ところで最近のフランス人は、自分たちの先祖をガリア人と考える人が少なくないそうです。

 ガリアをローマは征服したが少数であり、後にゲルマンのフランク族が征服した時も少数派だったのです。

 ガリア人が大量虐殺に遭い絶滅したという歴史はなく、そこに連続性があると考えているわけです。

 ガリア人はケルト族です。

 つまりフランス人は自分たちをラテン民族ではなく、ケルト族だと考えているわけです。

 その基盤を作った人の一人にユリアヌス皇帝がいる。

 そしてその人を慕って遠くペルシアまで遠征し、ササン朝ペルシアをあと一歩で亡ぼすところまでいったわけです。

 これはまさに大叙事詩、悲劇の皇帝の大叙事詩であるわけです。

 善悪はともかく、美の世界に陶酔としました。

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