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2019/5/29  21:36

背教者ユリアヌス(辻邦生著 中央公論新社)を読み終えた  読書人(4.23は本の日)
 電子図書を買いだして、過消費にも悩まされますが、本当に多くの本を読めるようになりました。

 「背教者ユリアヌス」は辻邦生の代表作です。

 北杜夫の小説を読んで親友の辻邦生に関心を持ち、「春の戴冠」に続いての大著の読破です。

 背教者ユリアヌスは大学時代から名著として知られていましたが、私には縁がないと思っていました。

 暴君ネロ、背教者ユリアヌス、キリスト教徒からは嫌われていますが、実は大変な名君だったと言われます。

 二人とも哲学を好んだ哲人皇帝でした。

 ユリアヌスは現在のパリのルテティアを本拠地とし、今のパリの基盤を作ったとも言われます。

 ローマ神殿の復興をめざした政策は時代錯誤気味ではあったが、ローマ帝国の伝統的政策ではありました。

 もし五賢帝の時代に生まれていれば、名君としてのみ歴史に名を残したでありましょう。

 ユリアヌスの不幸は亡びつつあるローマ帝国で生を受け、亡びるローマ帝国を守護する役割を担ったことにありました。

 一人優れた人間が生まれてもローマを亡びることは防げない。

 そして亡びるローマ市民もまたユリアヌスに冷たかった。

 しかしルテティア時代に支配したガリア人はユリアヌスを信頼し、彼をローマ皇帝へと押し上げ、ササン朝ペルシアとも戦った。

 若きガリア人たちは、若く純粋な皇帝を愛し忠節を尽くしたのです。

 ところで最近のフランス人は、自分たちの先祖をガリア人と考える人が少なくないそうです。

 ガリアをローマは征服したが少数であり、後にゲルマンのフランク族が征服した時も少数派だったのです。

 ガリア人が大量虐殺に遭い絶滅したという歴史はなく、そこに連続性があると考えているわけです。

 ガリア人はケルト族です。

 つまりフランス人は自分たちをラテン民族ではなく、ケルト族だと考えているわけです。

 その基盤を作った人の一人にユリアヌス皇帝がいる。

 そしてその人を慕って遠くペルシアまで遠征し、ササン朝ペルシアをあと一歩で亡ぼすところまでいったわけです。

 これはまさに大叙事詩、悲劇の皇帝の大叙事詩であるわけです。

 善悪はともかく、美の世界に陶酔としました。

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2019/4/28  13:39

マニ教(青木健著 講談社選書メチエ)読み終えた  読書人(4.23は本の日)
 青木健著の「マニ教」を読み終えた。
 ニーチェの「ツァラトストラかく語りき」の影響で、ゾロアスターについて読もうと思ったら、関連書籍で出てきた。

 近年、発見が相次ぎ研究が進んでいるそうで、興味がひかれた。

 最終的にウイグル族の国教となったのが絶頂期で、今は復活させた新興宗教を除き滅んでいる。

 彼らの信仰する「光の神」が、仏教の阿弥陀如来や弥勒菩薩に影響を与えているのではないか?と言われていますが、ミトラ神が弥勒菩薩に影響を与えているものの、阿弥陀如来については資料が少なく証明できていません。

 ただインドでは阿弥陀如来の発掘が少なく、中央アジアで商人が信仰していて広げたと言われます。

 弥勒菩薩は音から影響を証明できるものの、アミターバ(阿弥陀如来)とはそもそも何からきている名前なのか、いまださっぱりわかりません。

 ただ弥勒菩薩は未来仏であり、「光の仏」とは言われません。

 「光の仏」とは阿弥陀如来であり、太陽信仰と結びついていきました。

 音で証明できなくても、マニ教などと何かしらの関係はあるのでしょう。

 シルクロードのロマンを感じる本でした。

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2019/1/4  0:24

「忍ぶ恋」に生きる小山田庄左衛門なら美しいが・・・  読書人(4.23は本の日)
 赤穂浪士の小山田庄左衛門は、自分を愛してくれた薄幸の少女幸が忘れられなくなってしまい、その忍ぶ恋に生きることになります。

 また遊郭に出入りする中で、恋に命をかける男と女を見る中で、「主君に命をかけることと、愛する女に命をかけることとは同じではないか?」と考えるようになる。

 そして最後に来ない時、同志も「いろいろ思い悩んでいたからな」と同情の声が多かった。

 しかし、四十八人目の男の小山田庄左衛門は町人の娘姉妹との恋愛や、温かい町人とのつきあいの中で、武士の一分を守ることに疑問を持ち、最後はすべてを捨ててしまう・・・カッコ悪いのである。

 主君のために命をかけられないのなら、好きな女のためには命をかけて欲しかった。

 そして「四十八人目の男」は町人の男に、「姉妹のうち姉の方は事情があるので愛してはいけません。妹になさいまし」と忠告されても一切聞く耳を持たない、子供っぽい男として描かれているのだ。

 大佛次郎さんも、小山田庄左衛門だけは人格がつかめなかったかもしれない。

 だが「四十八人目の男」には別のテーマが入っている、それは「衰退する武士と台頭する町人」というテーマである。

 小山田庄左衛門は町人の世界に魅了された。

 ところで大佛次郎さんは「ときのこえ」の漢字を「鬨の声」ではなく、「鯨波の声」を使っている。
 
 海の近くに住んでいた人らしい使い方である。

 小山田庄左衛門は、町人の勢いという大波に呑み込まれた。

 それは世間が許さない、本人もそれはわかっていたことだった。

 しかしそれでも、愛しい女は守って欲しかった。

 それでなくては男道に反すると思った。

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2019/1/2  1:41

「四十八人目の男(大佛次郎)」を読む  読書人(4.23は本の日)
 読めてしまったという感じです。
 大佛次郎の「赤穂浪士」のスピンオフ作品なのですが、最後に討ち入りから脱落した小山田庄左衛門を主人公にした作品です。
 小山田庄左衛門には病身の父小山田一閑がおり、息子の逃亡を恥じて自害しています。
 小山田庄左衛門はその後、どこに行ったのかわかりません。

 一説には医者をして夫婦で下男に殺されたという話ですが、真相は不明です。

 当初仇討の強硬派だった男が、上杉家の家中の小関新九郎という武士と切り合いをし、敗北したことで自分を省みるようになる。

 そして自分を好いてくれる姉妹や、好意をよせる町人などに出会い仇討ちに疑問を持つようになる。

 そして当日、ついに行かなかった。

 赤穂浪士本編では、穂積惣右衛門という浪人の娘幸と好き合うが、小山田庄左衛門が関西に向かうにあたり捨てられたと考えた幸が自死、この世の無常を感じ仇討ちに疑問を持ち、酒と女に溺れるようになり最後に討ち入りに来ないということになっている。大佛さんも最後に来なかった男の心情に興味があり、赤穂浪士と別にもう一つ作品を書いたのでしょう。

 読売新聞の朝刊の小説だったそうで、この作品でデビューした挿絵画家の佐多芳郎さんが、大佛次郎さんや恩師安田靫彦さん、改造社の山本実彦(やまもとさねひこ)さんらの思い出話を書いていました。

 鞍馬天狗の映画で奇妙な行動をとった大佛次郎さんですが、全体としては温厚な方だったそうです。

 チャンスを与えてくれた大佛次郎さんに感謝する文でした。

 小山田庄左衛門の話を聞くと、武田勝頼が亡びる時に最後に裏切った小山田信茂を思い出します。

 織田信忠もその不忠を許さず処刑しています。

 つながりがあるわけではありませんが、何か行動が似ています。

 小山田氏といえば真田昌幸の長女村松殿と結婚し、その後真田家の家老となった小山田茂誠(おやまだしげまさ)のような忠義の人がいますが、小山田信茂のせいで小山田氏は裏切りの悪いイメージがあります。

 しかし迷いに迷ったでしょうし、自分のために父が自害したことは不本意だったでしょう。

 赤穂浪士では好き合った少女は死んでしまいますが、この小説ではまったくの別人ですが姉妹で生きています。

 そして町娘のよさを象徴するような姉妹です。

 好きな女性のための武士をやめて町人になるというのは、同情できるように思います。

 商人も商売が大きくなれば、学問が必要になります。

 三井にしても元は武士ですから。

 しかし土壇場で裏切ったのは、やはりいけなかったと思います。

 いったい何があったのか、この人だけは不明であるだけに私も興味がひかれます。 

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2018/12/30  14:48

忠臣蔵は教師によるいじめ事件ですからね  読書人(4.23は本の日)
 忠臣蔵はいじめ事件で、たとえて言えば教師が生徒からの付け届けが少なかったことに腹を立て、徹底的にいじめた結果として報復された事件です。

 平成に入り「暴力をふるった方が悪い」という形式を重んじた常識が広がり、逆にいじめがすごい勢いで広がりました。

 この事件は現代的な意味があるのです。

 吉良の肩を持つ人はいじめ容認派です。

 浅野の肩を持つ人はいじめ批判派でしょう。

 幕府は法秩序を考え赤穂浪士を処罰しましたが、その後は赤穂浅野家の旗本としての復活を認めたりしています。

 吉良などは浅野に厳罰が下った結果、喧嘩両成敗で最期は自分たちが改易になりました。

 浅野の処罰が軽ければ無事だったはずで、因果応報ということなのでしょう。

 吉良はいじめをするような人間ではなかったというのは無理、当時の記録を見ても吉良の肩を持つ人はいないようだ。

 それだけ悪行は知られていたのでしょうね。

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