学生時代、本職の柔道以外にレスリングとボクシングの試合を掛け持ちした。
今でこそ柔道は、体重別のイメージが強いが、本来は年齢別や段別の試合はあっても基本的には体重無差別。大学の団体戦も昇段試合も無差別だから普段は「体重を増やせ」ということになる。
柔道の無差別の試合に出るときは78〜80s。個人戦は65s以下級。
重いクラスのいないレスリング部の助っ人で出てたレスリングの試合は82s以下級だから74s以上。
ボクシングはウェルターだから66s以下。
1か月ほどの間に体重を65sから80sぐらいまでコントロールしていた。
きつかったのは正力杯全国学生体重別に出たとき。
東京に遠征し、日本武道館で初めて試合したときだ。
土日で行われる試合で、当初は金曜日に計量があると連絡があったものが二転三転し、結局、当日の朝からになった。
確か木曜日には本郷の宿舎に入っていたからその間、飲まず食わず。
サウナに入っても汗が出るどころか、水風呂に入ると乾いた皮膚が水分を吸って体重が増えた。
弱り果てていると同行していた大阪体育大の選手が利尿剤をくれた。
当時はドーピングなんて関係なかったし、飲んでみるとそれだけ乾いた状態でも30分ほどの間に5回の排尿があった。1回でコップ1杯の量だとしても約1s。
果たして翌朝の計量では62.5sまで落ちていたが、体力的にはフラフラな状態だった。
当時は減量についても手探り。医学書から「あしたのジョー」まで、参考になるものは何でも試した。
50歳のとき、初めて体組成なるもの計った。
86sの体重で体脂肪は20%ほど。脂肪の重さは19sだった。
あれ?
86s−19s=67s?
学生時代の方が筋肉量は多いはず。65s以下って何が落ちてたんや?ってことになる。
さて、それだけ体組成の計測や科学的な減量法も確立した現在のボクシング世界戦で体重超過による王座剥奪が立て続けに起こった。
日本人王者では初めてのことらしい。
外国人王者のときには「プロとしての自覚がない」とかの批判も多々あったが、今回はどう評論するんかな?
体組成を計測すれば、脂肪量や水分量も計測できるはず。この選手が何sまでの減量が可能なのか、僕らの時代と違って数値で表されるはずだ。
「根性」や「気合い」や「プロ意識」の問題じゃない。
選手は文字通り「身を削って」試合に臨むわけだ。
興行を優先することで選手の命を削るのは指導者のやることではない。
問題は選手を人間扱いしない体質にある。
奴隷の殴り合いの時代から現在まで、
奴隷主と興行主の考え方に大きな違いはない。

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