ニール・ヤングの公式サイト(
http://neilyoung.com/)が期間限定で最新の音源と映像を配信しています。
トップページのリンクが外れてからは(
http://www.neilyoung.com/crazyhorsevideo.html)で見ることができます。
クレジットには、Jan 6, 2012 とあるから、新年早々のCrazy Horseとのスタジオリハの様子なんだろうな。
37分25秒 延々と流れ続けるジャムセッションとスタジオ機材などの映像は、特に興味を持たない人からは冗長なものでしかないだろうけど、演奏が途中で“Cortez The Killer”になったりすると「ありゃ、ツアーもあるかも」、なんて期待も出てくるわけですな。
映像はミキサーの機材からギターなどの楽器類に移っていく。
ニールの機材については、過去に「Player」誌や「Acoustic Guitar Magazine」誌の特集を任せてもらったこともあるので、そこそこは知ってるつもりだけど、それでも最新映像は垂涎もんです。
ちょっと脱線しますが、アンプの上にワニの剥製の頭部が乗ってます。
ルイジアナ土産によくある奴ですね。僕も(幸運を呼ぶ?)ワニの左手の剥製を持ってます。
ルイジアナとニールヤングってのは、あんまり結びつかないかもしれませんが、結構、ニールってのは南部好きなんですね。「Harvest」やその後の「Time Fades Away」、「Harvest Moon」の時のバックバンド名は「Stray Gators(迷いワニ)」ですね。Gatorはアリゲイター(ミシシッピワニ)のこと。
まあまあ、そんなこんだで、今までの経緯を知ってる御仁たちからは、「解説せえ」というご要望が寄せられる。まあ、自分の備忘録にもなるんで、ブログでおいおい書きますよ、って返事をしときました。
「Player」誌からは、当時掲載された生写真もいただいてますんで、それも交えてね。
この日記、原稿を徐々に追加していきます。油断せんといてくださいね。
では、最初はやっぱりニールのエレクトリックセットのメインギター「OLD BLACK」でしょう。
★OLD BLACK――Les Paul
1969年、ジム・メッシーナが所有していたものを「グレッチと交換」して入手したというこのギターは、元々は1953年製のLes Paul Gold Top。ニールの手に渡った時には、もう黒く塗装されていたらしいです。製造については54年とか、言う人によって諸説ありますが、そんなもんは、もうどうでもいいぐらい改造に改造を繰り返されています。
だいたい本人たちの発言は、けっこうええ加減なことが多いので、僕は彼のギターテクを務めているラリー・クラッグのインタビューを参考にすることが多いんですがね。
改造の中でも特徴的なんは、ピックガード、フロントピックアップやトラスロッドほか、色んなカバー類もメタルのものに交換され、黒いボディとのコントラストを際立たせています。また、ネックはも付け替えられて、若干角度も変わっていますし、ヘッドにはクラウンインレイも。

改造の主な変遷を見ていきます。
これは、CSNYの楽屋でのショット。ジムから入手したばかりの頃かもしれません。
モノクロの写真なので分かりにくいですが、リアのピックアップは黒いカバーのP-90。フロントのP-90は現在同様、メタルカバーになっているようです。
また、ビグスビーのトレモロユニットが、現在のB7ではなくB3ですし、ボリュームノブとトーンノブの間にあるミニスイッチも確認できません。
この後、リアのP-90が故障し、デアルモント製のピックアップに交換されます。
グレッチなんかについてたピックアップですね。この写真は1969年のCrazy Horseとのツアーの写真ですから、黒いカバーのP-90だった時期はほとんどないのかもしれません。初期の頃のレスポールの音は、このピックアップの音なんでしょうね。
特にアルバム「Everybody Knows This Is Nowhere」でのダニー・ウィットンとのスリリングなギターバトルはこの頃ですね。
ちなみにダニーはグレッチ好きで6120を弾いています。
この頃のダニーは6120やホワイトファルコンのステレオを持ってる写真が多いのですが、ニールのギターを弾いていたのかもしれません。
この後、この黒いレスポールは、行方不明になります。リペアに出してた楽器屋が店をたたんでしまって、このギターの行方も分からなくなったというのです。
って、ずっと思ってました。
たとえば、伝記「ニールヤング 傷だらけの栄光(A Dreammer f Pictures - The Men and His Music)」【デヴィッド・ダウニング著 平田良子訳 ISBN-8456-0102-8】などを読むと、1975年のZUMAのレコーディングのときに
「同じ頃、数年前から紛失していたギターが見つかった。(中略)黒いレス・ポールのことである」
というような記述があったからです。
だけど、ギターそのものが行方不明になってたのなら、後述する1973年後半のTonight's The Night Tourで弾いているのはなぜ?という疑問がわきます。
また、1974年のCSNY再編ツアーでもレスポールを弾いてるんですね。
だから、OLD BLACKそのものが行方不明になっていたのではなかったんじゃないか? 潰れた楽器屋に修理に出していたのはリアのピックアップだけだったのかな、と今では考えています。
ともあれ、黒のレスポールが使えなかったので、この時期のメインは、グレッチのホワイトファルコン(4スイッチのステレオ仕様)、あるいは、1973年の「Time Fades Away」ツアーでは、ギブソン・フライングVを使っています。
OLD BLACKは、クリーム色のカバーのP-90が付けられている時期も確認できます。1973年の「Tonight’s The Night」ツアーの頃です。
この頃にはビグスビーもB7に交換されていますし、ミニスイッチも確認できます。
後のラリー・クラッグのインタビューでは「元々はフェイズ・スイッチだったが、俺がテクになった時には既に外されていた」とあります。
ラリーがニールのテクになったのは1973年。Mesa Boogieの創設者 ランディ・スミス(Randall Smith)からの電話があったそうです。
ちょうど1974年のCSNYツアーの準備に入るころらしいですから、73年のこの写真では、ミニスイッチが生きていたら、フェイズ・スイッチだったことになります。
↓この写真は1974年のCSNYツアーに向けてニールのランチョで行われたリハーサル時のものですが、おそらくこの時点ではP-90のままのようです。
ところが、ツアーが始まると…
どうやらこの頃に、ギブソン製のミニ・ハムバッキングPU-720に交換されます。1960年代初期のファイヤーバードについてたやつですね。
ペグもグローバー製からシャーラー製に交換されます。1975年の「ZUMA」、それに続く1976年の初来日の際の音がこの仕様で、現在も基本的にはこの仕様によります。
この写真は2003年「greendale」ツアーの際、日本武道館で撮影されたOLD BLACKです。
前述のボリュームノブとトーンノブの間のミニスイッチは跡だけになっています。
実は、ほとんど、このスイッチが確認された写真はなかったんです。
ところが、
急にミニスイッチが復活しています。これは2006年の「LIVING WITH WAR」をレコーディングする直前に復活したものです。
当時のラリー・クラッグのインタビューによると、「もともとはフェイズスイッチが付いていたが、自分がニールのギターテクになった時には既に取り外されていた」ものを「ボリュームとトーンのバイパス・スイッチをつけた」ということらしいです。
ちなみに僕のメインギターは、2005年にギブソン・カスタム・ショップから発売されたレプリカモデルです。
結構、忠実に作られていて、限定20本の生産。おまけに市場に出回ったのは十数本ってやつです。このモデルにもミニスイッチはついてたんですが、これはリアのピックアップのコイルタップでした。
当然、改造しますね。
現在は、バイパススイッチになってます。さらにレア度は増したんですね。
バイパスすると抵抗による減衰が少なくなりますから、よりネイキッドな音になります。一言で言うと“やんちゃ”な音になりましたね。
このブログ、しばらく中断したのには理由があったんです。
分からんことが出てきたんですね。
ビグスビーのここの部分に何かプレート状のものが確認できたんです。
よく分からなくって、今まで気づいてなかったんですけどね。
↓
確かにある。そしたら、ゴールドトップにもあるんですよ。
↓
これが何なのか? まだ、この問題は解決してません。
脱線しますが、オールドブラックに使われているストラップについてちょっと触れておきましょう。ピースマークと鳩が描かれているものですね。
もう最近ではボロボロになっていますが…。
1969年のCrazy Horseとのツアーでは、こんなストラップでした。
このフィルモアの写真はモノクロしかないので、色とかは分かりません。
その後、デニム製の幅広のストラップに変わります。
1976年あたりまでこのストラップが多いです。
このデニム製のストラップはアコースティックギターにも似たものが使われていますし、ビリータルボットも同じようなものを使用しています。
ピースマークと鳩のストラップが登場するのは、1977年、The Ducksとのライブの時です。ニールヤングという名前を出さずにシークレットで行っていたライブですね。
この時は、このストラップだけです。
しかし、翌1978年のRust Never Sleeps Tour、このストラップが一躍注目されたツアーの際にはデニム製ストラップと重ねて(張り付けて)使用しています。
オールドブラックはかなり重いです。僕のイミテーションでも5kgを超えています。
幅広のストラップを重ねたのは、そんなことも影響しているのかもしれません。
後にこのストラップは黒いガムテープのようなもので補修されます。
あまりにも適当なこのやり方で20年以上使ってました。
さすがに最近では、レザーのようなもので丁寧に(笑)補修されています。
その程度の補修、もっと早くやっとけよ、って(笑)。
★Les Paul Gold Top
今回の動画で最初に登場するギターがLes Paul Gold Topです。これは、1990年、久々のCrazy Horseサウンドとともにリリースされたアルバムが「傷だらけの栄光」のジャケット写真に載っているものですね。ゴールドトップを持ったニールは、ものすごく新鮮だったことを思い出します。このアルバムリリース後のツアーが収録されたのが「WELD」で「グランジのゴッドファーザー」などと呼ばれるきっかけになった時代だといえるでしょう。
このゴールドトップは、OLD BLACKとほぼ同じ改造がなされています。B7のビグスビーがマウントされ、リアのピックアップはPU-720です。それにピックガードもメタルになっています。
基本的に共通するのは、これだけですね。ペグはシャーラーではなくグローバーですし、フロントピックアップのP-90やその他のカバー類もメタルには変わっていません。
このゴールドトップはあくまでサブとして使われることが多いのですが、特にダブルドロップDの曲で使われる頻度が高いです。厳密じゃないですけどね。
ブリッジのオクターブ調整用のネジは、ビグスビーで邪魔にならないように前側についています。これは黒も金も同じですね。
どうでもいい話ですが、ビグスビーの黒く塗装されている部分、OLD BLACKはすっかり塗料が取れています。これは、使っているうちに徐々に取れていったものなんですね。
76年ぐらいから、徐々にはがれていくんですね。
ゴールドトップはリアのPUがクリーム色のままのものもあって、ひとつは93年のBooker T. & The MGsとのツアーの際に弾いています。ちょうどディランの30周年「ボブ・フェスト」の後のツアーですね。
それと2003年のグリーンデイルツアーで用いられたもの。
これはラリー・クラッグのギターだったようです。
グリーンデイルツアーの際のインタビューで、ニールはOLD BLACKが野外コンサートで雨に濡れてPUの調子が悪くなったのとフレットを打ち直したため、「もう昔の彼女じゃない」なんて表現でOLD BLACKは使わないようなことをいってましたが、来日時では第2部で使いまくってましたね。未だに使いまくってますから、あのインタビューは何だったでしょう?
2013年のCrazy HorseとのツアーではビグスビーがB5のゴールドトップも見られます。
これはこの時が初めてのお目見えかな。
このB5をマウントしたゴールドトップは演奏中、弦を切ったポンチョも代わりに使ってたりしました。
★ White Falcon Stereo
1970年ごろからのファンには、このギターが一番なじみがあるんではないでしょうか?
グレッチのホワイトファルコン。ステレオ仕様のものです。
ホワイトファルコンは他にも何本か所有しているようですが、このステレオ仕様のものがステージでは一番使っています。
↑ このモデルは、2000年代に入ってから、スティーヴン・スティルスのシグネイチャーモデルとして発売されたものと同じ仕様ですね。
↑ このダブルカッタウェイモデルは70年代半ばにはよく弾いてましたが、最近は見かけません。
この写真は1974年のCSNY再結成ツアーのときのものですが、1976年の初来日時には、当時未発表の「Lotta Love」を2カポで弾いていました。
ステレオアウトのギターは、フロントとリアのPUの音をステレオで出すものもありますが、ホワイトファルコンの場合は、1〜3弦と4〜6弦の音をステレオアウトするものです。
ラリー・クラッグの2006年のインタビュー記事を読むと、このステレオアウトのホワイトファルコンは、1〜3弦をフェンダーデラックスに、4〜6弦をラリーのトレモラックスに出力していたようです。
2007年のツアーでは、ギブソンのステレオアンプが確認できます。
おそらく、ギブソンGAシリーズのステレオアンプだと思われます。
これがファルコンに使われてたと思います。
最近になって気づいたのですが、このアンプ、1976年ごろにも使ってますね。
ダニエル・ラノアのプロデュースで出した2010年の「Le Noise」では、フェンダーデラックスを2つ接続するとともに、コルグのペダル鍵盤を使って重低音を出していました。
グラミー賞受賞につながった作品ですね。
最近のツアーでは、マグナトーンのトワイライターを2つつなげてますね。
★ Flying V
ギブソンのフライングVは、1958年にエクスプローラーとともに発売された時は余りにも斬新な形で全く売れず2年間で98本しか販売されていません。オリジナルはボディがコリーナ材製ということですが、実際、ニールが持ってるのが、明らかにコリーナ製のもの、

それに少し色の濃いひょっとしたらマホガニー製じゃないかな、っていうのがあります。

ライブの写真は大抵色が濃いんですね。
調べて見るとこんなのもあったようです。
↓
http://www.flying-v.ch/f_5859/f_5859.htm
2015年8月に海外のマニアがこんなサイトを作っていました。
↓
http://www.rusted-moon.com/2015/08/neil-youngs-gibson-flying-V.html
トレモロアーム?
ランチョで撮られた初期の写真では確かについてます。見逃してましたねえ。
このサイトの解説によると、このアームは取り外されて大きめのプレートをつけることで、ネジ穴を隠してるとのことですね。確かにオリジナルのプレートより大きめです。
その他の改造といえば、グローバーペグに取り換えてるとこぐらいですかね。
フライングV=矢をイメージしてるんで、形は気に入ってたようなんですが、音や使い勝手の面では好みじゃなかったみたいで、結局、このツアーでしか弾いていません。
90年ごろのインタビューでは、もう手放した、とも語っています。
★ Hagstrom I
珍しいところではこのギター。
初めて登場するのは1982年のTRANS TOURのときのこの写真。
ハグストロムというスウェーデンの会社の1965年〜1969年に製造されたVintage Hagstrom I Electric Guitar -というギターです。
この写真でしか見たことがなかったのですが、2009年4月にリリースされた「FORK IN THE ROAD」の頃のスタジオ写真で見ることができます。
それ以外では見ませんね。
スウェーデンには、1970年にCSNYツアーでライブをやってからは、1982年10月8日・9日のトランスツアーまで演奏していません。もしかすると、ツアー中に入手した可能性もありますね。
★ Explorer
珍しいといえば、1982年のトランスツアーでは、ギブソンのエクスプローラーを弾いてる写真もあります。
エクスプローラーといえば、1958年、フライングVとともに「未来的(futuristic)デザイン」ということで「FUTURA」という名前で発売された機種ですね。
斬新的過ぎては販売は伸びず、フライングV同様、翌年には製造中止に。1975年に再生産されています。
この写真では機種は特定できないのですが、1970年前後からスティルスの影響もあって、かなりのギターをコレクションしてたようなので、初期モデルなのかもしれません。
★ NEUMANN KMS 140
脱線しますが、彼が愛用しているボーカルマイクです。

70年代はSHUREのマイクっぽいですが、90年代以降は、このマイクですね。
※ まだまだ続きまっせ♪

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