大阪がニューオーリンズになってた。
元々、八百八橋。川の多いこの街の、しかも、中之島と呼ばれる中州で行われたイベントだ。いわばルイジアナのデルタみたいなもんだから、彼の地から訪れたミュージシャンたちも気安い雰囲気だったかもしれない。
まあ、デルタと比べると高層ビルが間際に林立し、高速道路が空を狭くして、何もかもが彼の地よりは小ぢんまりしとるのだけれど…。
シリル・ネヴィルのバンドヒロナリ氏がギターリストとして参加し、帰ってくるてことやったから、本当に何年かぶりで会えたらなぁ、と思ってた。
8日の日曜日は、バンドでスタジオに入ってたから、中之島には行けなかった。
だけど、西区のバー「Beatles」でニューオーリンズ好きたちによるライヴパーティーがやってるてんで、スタジオを出てから、バンジョーを担いで覗きに行った。
マスターに挨拶してから、ステージを見やるとベーシスト・ムーサンが大きな身体を揺らしながら独特のだみ声で歌ってた。ボタン式のアコーディオンを弾いてるのは、やはりオノリオさんだ。オノリオさんとは、ネットでのやり取りはあるものの、直接会うのは数年ぶりだ。
「がる〜さん」
声のするほうを見ると、広島在住のマッカチン君だ。彼とはそれこそ前の世紀に一緒にケイジャン&ザディコバンドをやったことがある。一昨年の広島ツアーのときに会って以来だ。
演奏の合い間に色々挨拶をしてると「がる〜さん」「がる〜さん」と声がかかる。ほとんど面識のない人からも「がる〜さん」と呼ばれる。
いやはやネットってのは不思議なもんだ。直接、顔を合わせてなくても、色んな会話が日常あるわけだから、しょっちゅう会ってるような錯覚に陥る。
演奏がが一通り終わったところでお呼びがかかる。
もちろん、歌える機会があればどこでだって歌うつもりでいるから、バンジョー片手にホイホイとステージに行く。
ミュージシャンが集まると話が早い。ベースにドラム、ギターにキーボードと即席のバンドが出来上がった。
ザディコやケイジャンを歌うのは本当に久しぶりだけど、セッションがやり易いように2コードの曲を2曲選んだ。途中のややこしい展開もなしだ。ブルース・サンパイ・バーンズのIt's All Right」、それにケイジャンナンバーの「Cher Canaille」を歌った。客席にコーラスを煽ると乗ってくる。こんなイベントでの演奏は、出来云々よりもお祭り気分で楽しいからいいな。
かいた汗の分、テキーラで補給してると、何やら入口が騒がしい。振り返ってみるとぼんちのおさむさんが入ってきた。続いてヒロナリ氏が。
「おお〜〜〜〜〜」
ヒロナリ氏と抱き合って背中をばんばん叩きながら再会を喜ぶ。
「太ったなぁ〜」
「ハリケーン太りやわ〜」
他愛もない会話すら楽しくて仕方ない。
おさむさんと会うのも1年ちょっとぶりだ。
「肩凝ってるねん」
とおさむさんは催促する。笑いながら頚部や肩を揉み解してあげる。
「どんな感じ?」と尋ねるから、
「首の付け根が凝ってますなぁ〜。何が悪いっちゅうより、こりゃ芸風ちゃいますか?」と返すと、
「ほら、芸風やから、しゃあないなぁ〜」と漫才みたいな会話になる。
なんちゅうことはない。本当に他愛もない会話を交わし、気が向けば演奏し、気がつけば深夜の1時を回ってた。
中之島に行ったのは、最終日。昨日の夕刻だった。
橋から階段で中洲に下りる。すぐに見つけたのはフィドラーのQ仁美だ。彼女とは昔よく演奏した。
救済募金を払ってビーズを受け取る。そういや、ザディコバンドのライヴで、ビーズをばら撒きながら入場したこともあったっけ。
昨夜あった連中の姿も見える。マイミクのみやこさんは3日間、皆勤だそうだ。
ギターの仲さん、キーボディストの井山、ベーシストの山本マーサン・・・。仲のいいミュージシャンと挨拶を交わす。
メインのステージ近くには、色んな出店が出てた。
Tボーンステーキなんてのも売ってる。
どうせやるなら、鰐かザリガニが食いたいところだけど、そこまでは徹底してない。
ふと見ると北新地のしゃぶしゃぶ店の兄ちゃんが屋台で調理してる。目が合った。スーツ姿しか知らない彼は目を丸くしてた。
マッカチンらと赤ワインを飲みながら、うだうだシリルの出番を待つ。大勢の人だかりだ。
初日に近隣から派手な苦情があったそうだ。
音量は控えめ。だけど、演奏は楽しかった。
いやいや、色んな人たちと会った。
それだけでも良かったな・・・。
Good to see you
Good to see you again
Good to see your face again
Good to see you
I'm the suitcase in your hallway
I'm the footsteps on your floor
When I'm looking down on you
I feel like I know what my life is for
Good to see you
Good to see you again
Good to see your face again
Good to see you
I've been down the endless highway
I've passed on the solid line
Now at last I'm home to you
I feel like making up for lost time
Good to see you
Good to see you again
Good to see your face again
It's good to see you
(「Good to See You」by Neil Young)

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