絶好の花見日和な午後、阿波座の柔整会館で、柔道の審判員のBライセンス講習に出てた。
13時からになってたので、12時半過ぎに行くと受付が13時から。実際始まったのは14時を回ってた。
2年に1回更新しなけりゃならんこのライセンス、近畿2府4県からおよそ300人ぐらいの審判員が集まった。2年更新だから来年更新の連中もいるわけで、近畿圏には数百人のBライセンス審判がいる勘定になる。
Bライセンスは、27歳以上、柔道の段位は4段以上が対象で、Cライセンス取得後、何年か経過してなきゃならない。僕は大学卒業後、すぐに関西学柔連の審判員になったから、この審判員制度に移行したときには、Cライセンスを飛び越していきなりBライセンスになった。ちなみにCライセンスは大阪府柔連、Bは近柔連の認定で、Cライセンスは府県レベルの試合、Bライセンスは複数の都道府県にわたる試合の審判を行うことのできる資格だ。
受付で更新料3000円を支払う。この講習を受講できずにライセンスを失効すると、次回の講習で、6000円を支払い、おまけに筆記試験までせにゃならんことになる。みんな渋々受講するわけだ。
この紙切れ1枚のためにね。

14時過ぎに始まった講習会。広い会場にはパイプ椅子が並べられただけ。テーブルすらない。それで、連盟のお歴々がA4判6枚にまとめられた資料をもとにだらだらと解説を行っていく。資料の内容は、講道館ルールと国際ルールの相違点についてまとめられたもの。
そう、日本の国内では、柔道総本山の講道館の定めた講道館ルールと国際ルール、さらには、警察だけに通用するルールが混在してる。内容の是非はともかく、常識ある柔道人なら、国際ルールに統一すべきと考えるのは当然なんだけどね。
だけど、講習を行うなら、ちゃんとした見解をもって解説を行うべきなのに、実際はそうじゃない。講師を務める役員の私見を述べていくだけだ。
「国際ルールと講道館ルールではこのような違いがある。理由はわかりません」てな具合だ。
まったくもって不毛な時間だ。途中10分の休憩を挟んで、16時半まで。講習は延々と続いた。
実際、審判員はボランティアだ。関西学柔連の試合では、お車代で3000円くれた。他の試合も似たようなもんだ。柔道で飯なんか食えないのだ。
五輪でメダルを量産しているわが国の柔道は、実際このような民間のボランティアで支えられてる。
昨日は、午後から柔整の学校で柔道実技の授業を行ってた。今年から非常勤とし天理大卒のT先生が来てくれることになった。
T君は、現役時代、先のアテネ五輪の金メダリスト・内柴と接戦を繰り広げた名選手だ。150cm台の身長だけど、鍛えた全身の筋肉は一線を退いた今でも素晴らしい。天理大出身らしい姿勢のいい綺麗な柔道をする。
そんな彼でも、大阪城公園内にある市立の道場で指導するのが1ヶ月で8万円。とても、飯が食えた代物じゃない。
もう既に20年も前から、大阪府にある柔道場の数よりパリにある道場の数の方が多かった。人口数千万の彼の国では、テレビで柔道のCMが流れ、国を挙げてこの競技を支援してる。
「柔道は国技」
実は多くのフランス国民はそう思ってる。
柔道が生まれたこの国での意識はどうなんだろうね。
わずか1回300円も払えば、道場で自由に練習ができる。そこには、全国レベル、国際レベルの選手だった指導者が普通に稽古に来てて、特別に報酬を受け取ることなく指導してくれる。無報酬どころか、有望な選手には身銭を切って腹いっぱい飯まで食わしてもらえる。
そんな競技は他にない。
僕らはそうやって育ててもらった。
その恩返しなわけだ。
そんな奉仕精神だけで、この国のこの競技の金メダルは生まれている。

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