夢のまた夢

題詠１００首、折り返しになりました。
ここまでの５０首をまとめて。


001:風　　　　　金色の波がさざめくあぜ道で風を見ていた　君へ届けと
002:指　　　　　スプーンに映したような顔をして指輪の跡をそおっとなでて　
003:手紙　　　　渡された東雲色の手紙にはただいっぱいに生きろ生きろと
004:キッチン　　キッチンにあればなんでもないけれど玄関ならば怖い包丁
005:並　　　　　義父の背で聴く人生の並木道　泣かせぬように眠る初孫
006:自転車　　　自転車の二人乗りにも情緒とか必要なんじゃないのでしょうか
007:揺　　　　　さよならが揺れているのはストーブの炎で部屋を暖めたから
008:親　　　　　新弟子を世界中から探そうと親方衆のマイルは貯まる
009:椅子　　　　教室の小さな椅子を引く音も黒板をこするチョークの音も
010:桜　　　　　満開の桜の園に精霊が集うらしいと真顔で君は

011:からっぽ　　弁当の米粒ひとつ残さずにからっぽにする　愛情込めて
012:噛　　　　　含ませた乳房を噛んで微笑んで飲まないのなら彼に返して
013:クリーム　　１００円のソフトクリームなめ合った中２の夏に戻りたくても
014:刻　　　　　タマネギと一緒に刻み込んだから涙と私の味がするはず
015:秘密　　　　黄昏の秘密は甘いメープルの香りをさせて君をいざなう
016:せせらぎ　　せせらぎが聞こえ始めた田んぼではアマサギたちの集団見合い
017:医　　　　　医療事務ホームヘルパー絵手紙が人気を博す通信講座
018:スカート　　大胆なスリット入りのスカートは薄暗い店専用にする
019:雨　　　　　雨雲を吹き飛ばしてよ　あの山のてっぺんにある風車を回して
020:信号　　　　使い捨てコンタクトで見る信号は花笠音頭を踊って危険

021:美　　　　　美し国伊勢の隣の松阪で美味い肉牛育てています
022:レントゲン　レントゲン室の冷たい台に乗る夢を見たのは独り寝の夜
023:結　　　　　結い上げた髪をほどけばかけられた魔法もとける　続きは夢で
024:牛乳　　　　シリアルの代わりにかっぱえびせんに牛乳をかけ食べてごらんよ
025:とんぼ　　　自転車でとんぼの群れにつっこめば耳元に聞く羽のかさかさ
026:垂　　　　　駅ビルの横っ面には垂れ幕と横断幕でシミ隠しなど
027:嘘　　　　　指先がドライアイスの冷たさであなたの嘘を教えてくれる
028:おたく　　　ニッポンの将来背負いこの先も伸びていこうね　おたく産業
029:草　　　　　月のない空を見上げる月見草　梅雨あけ待って咲けばいいのに
030:政治　　　　不正とか腐敗の文字が仲良しで誠実・華麗と不仲の政治

031:寂　　　　　いつもより言葉少なに曖昧な返事をされるとなんか寂しい
032:上海　　　　怪しげな出店が並ぶ上海の虹橋空港好きだったのに
033:鍵　　　　　どちらかと言えば打楽器なんだろう　鍵盤の奥にハンマーがある
034:シャンプー　シャンプーのボトルに小さな隆起などつけて誰かに優しくしてる
035:株　　　　　株分けをやらないままに根の張ったシンビジウムの鉢　５分割
036:組　　　　　こめかみの傷は小さいはずなのに「組長」なんて呼ばれています
037:花びら　　　花びらを揺らして虫を呼ぶんだね　風媒花には必要ないね
038:灯　　　　　踊ろうか　やぐらにともる提灯と太鼓の音が消えていたって
039:乙女　　　　髪を梳き紅をひいては青年の訪問を待つ乙女（８０）
040:道　　　　　明け方の３車線ある道路なら反復横跳びしてしまうかも

041:こだま　　　新幹線こだま号なら開くはずの窓には鍵がかけられている
042:豆　　　　　手触りは豆大福の柔らかさ　あわい塩気と豆の固さも
043:曲線　　　　地図上にまっすぐな線を描いても地球上では曲線だった
044:飛　　　　　親として最終任務を果たすため軒下からの飛行訓練
045:コピー　　　将来の夢はコピーを取る人と目を輝かせ答える娘
046:凍　　　　　ガチガチに凍った道に果敢にもノーマルタイヤで挑んでみます
047:辞書　　　　辞書曰く「字をひく書なり」と教えられ　英語の授業の乾いた笑い
048:アイドル　　アイドルの必須条件塗り替えるＳＭＡＰ達の行く場所はどこ？
049:戦争　　　　戦争に勝つも負けるも失った命の重さにかわりはなくて
050:萌　　　　　戸袋に居候するヒヨドリの鳴き声がする　夜明けの萌し


月見草はどうして梅雨時に咲くんでしょうね。
月なんか見えやしないのに。