久しぶりに「イーサボット・コマンダー」で作品公開して、
ありがたいことにいろんな方からコメントや感想を頂戴しました。
もちろん、私の作品を読んでくださり、さらには感想をくださる方というのは、最低限「私の作風」に興味・感心を寄せてくださった方だと思われます。
つまり、そこでエコー・チェンバーが起きる可能性は想像に難くなく、ある限られたクラスターの中における評価だと考えざるを得ません。
「イーサボット・コマンダー」を気に入ってくださった方がいたとしても、それは全体の傾向ではなく、また、多くの支持が得られたわけでもない、ということです。
ただ逆に、そうした方が少なからずおられることに、私は大いに勇気づけられ、救われ、つくづく有り難いと思わずにはいられません。
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「イーサボット・コマンダー」は「お手軽MCエロ」を目指して書かれました。
ウツ要素をできるだけ排し、お気軽・簡単にMC可能な手段を用意し、主人公やヒロインの煩悶も読みづらさを損なわないレベルに抑える。
そのかわり、エロ展開をみっちり、フェチ要素をたっぷり、MCエロならではの話を描く。
ただ、同時にラブ+ハッピーエンド。バッドエンドや崩壊エンドにはしない。
このことがテーマでした。
その結果、「お手軽エロ」であればあるほど、「ご都合主義」的な要素が強くなり、ラブ+ハッピーエンドにするためには、その「ご都合主義」を超える必要が発生しました。
……というのも、ご都合主義というのは、「ああ、この話、実に都合よくできてるなぁ」と、簡単に感じさせられる可能性があるからです。
もともと、フィクションの多くは決められたストーリーを辿って、決められたラストシーンにたどり着く。
それ以外の要素は、できるだけ省くのが王道で、(私は得意ではありませんが)計算された作品であればあるほど、書かれていることすべてに実は意味があり、それはストーリーやシチュエーションを構築するために存在していたりします。
しかし、MCはそもそも、その流れや展開を、あっけなくすっとばして結果に至るための「魔法のツール」です。
「MCツールを手に入れた」「MC能力を手に入れた」途端、どんな相手でも、簡単にMCでエロに持ち込むことができます。
もちろん、そのための儀式や能力の発動、催眠術なら催眠の手順など、こだわろうと思えばその過程を延々と描写することが可能だし、そこにフェティッシュな興味や感心を寄せる人も一定数おられます。(私もそうですw)
ただ、たとえそこをどれだけ細かく描写しようとも、その手法に説得力がなければ「ご都合主義」的になってしまいます。
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そんなMC作品で「ラブ」+「ハッピーエンド」を目指すとどうなるか?
どんなに仲のいいエッチシーンであっても、あるいはハッピーエンドであっても、「結局はMCで言いなりにしてるだけじゃん」という、実にマットウなツッコミが入るわけです。
つまり、「暴力で陵辱しまくった揚げ句にラブラブになりました。めでたし、めでたし」というのとほとんど同じ、嘘臭い物語になってしまう可能性が高い。
そこで、フィクションの出番です。
MCというズルくてご都合主義(≒フィクション)な手段をとりつつも、ラブでハッピーなエンドを迎えるにはどうしたらいいか?
これは拙作「秘密の箱」にもいえることですが、MCの問題点・危険性を明らかにした上で、さらにそれを使ってもOKな関係性を構築するしかありません。
そんな都合のいい話はあるのか?
普通に考えたら、あるわけがない。
でも、それを実現可能にするのがフィクションです。
それに成功しているかどうかは別にして「イーサボット・コマンダー」は「お手軽MCエロ」を目指した作品です。そして同時に「ラブ」+「ハッピーエンド」にすることが決まっていました。
もちろん、どのように感じるかは、読んでくださった方に委ねられることです。
ただ、飽くまでも中心に「MCエロ」を置きながら、できればその「ご都合主義」が見えない、感じにくい作品に仕上がっていることを願っています。
私はもっともっとズルくならないといけないのかもしれません。
それこそ「ご都合主義」だと気づいても、そんなことすらどうでもよくなるようなフィクション、そんな話を書きたいと思った次第です。

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