ごちゃまんと団子状態で仕事が立て込んでいて、その合間にご褒美のようにサイトを更新しました。
「大人綺譚」は、今年の春頃に書きためたもので、完成していたもの三作を同時掲載としました。
本当なら、秘密の箱やバッド・トランスの新章が完成した後に、余裕をもって、ぽつぽつと公開していきたかったのですが、どうにもこうにも計画通りには進みませんでした。
とはいえおおむね好評で、胸を撫で下ろしているところです。
雑記帳にも書かせて頂いたとおり、ローカルのHD内には、まだあと7夜分くらい、書きかけのものやプロットだけのものが寝かせてあります。
発酵が進み、長編の合間にぼこっと出来上がる度に、掲載していこうと思っています。
また、「投稿・大人綺譚」の企画も立ち上がり、しかも続々と投稿を寄せていただいており、嬉しい悲鳴をあげているところです。
もちろん、自作の執筆をないがしろにする気はありませんが、編集という作業もなかなか難しく、同時に執筆とはまた別の大きな喜びに満ちていることに気づかされました。
投稿頂いた皆さん、感想をくださる皆さん、そして読んで下さっている全ての人に感謝。
第二夜「羽化」のPanyanさんは、オフでも何度かお会いした、味わい深いお話を書く方です。
元々、私は彼の作風が好きでしたし、その文体にも魅かれていました。
でも、(かなり不遜なことながら)自分のサイトに掲載するとなると、欲がでます。
単純な校正にとどまらず、ここをもっとこうしたらどうだろう? そんな意見が湧いてきます。
多少の親しさと、「不適切な部分があれば、徹底的に直します」とのお言葉にのっかって、不適切なわけではまったくなかったにもかかわらず、かなり濃厚な書き直しをお願いしてしまいました。
最初はドキドキでした。
原稿をいったんお戻しした後、お返事をいただくまでの間、何度も後悔しました。
元々なにがしかの信頼関係と、文章へのこだわりを感じる作風ゆえ、お願いした次第ではありましたが、そうはいっても、別にギャラがでるわけでもないオンライン投稿です。
イチャモンつけられながら書かなければいけない筋合いはまったくない。
でも、Panyanさんから戻ってきた第二稿は、まるごと見事にブラッシュアップされていました。
色気混じりの私の欲や傲慢さを軽々と凌ぐ、独特の雰囲気と味わいに彩られた作品に仕上がっていました。
ノーギャラのオンライン作品であっても、編集作業は可能であることに、私は非常に勇気づけられました。
しかし――。
続いて投稿して頂いたのは、初めてメールを頂く方でした。
しかも、ご本人の弁によれば、「まとまったものを書くのは今回が初めて」ということでした。
Cバージョンの校正を望まれていました。
かなりツッコんだ意見を含めてお戻ししました。
こちらはさらに、ドキドキものでした。
私は別に、意地悪なことがしたいわけではありません。
けれど、もともと校正作業は、半ば揚げ足取りのような性質を帯びていますし、まして作品の流れそのものにまで要望を出すことは、人によっては自分が否定されたように感じたり、あるいは自分の才能に疑いを持ったりします。
私だって、指摘のされ方次第では、ガックリと落ち込むことだってあります。
まして、せっかく「物語を書いてみよう」と思い初めて執筆し、投稿してくださったにもかかわらず、私の意見に落ち込んだり、嫌になってしまうのではないか。
新しくオンラインに作品を公開しようとされる方の意欲やパッションを、削ぐ結果になってしまうのではないか。
――しかし、それもまた杞憂でした。
かなりツッコんだ意見を含めてお戻ししましたが、見事に文章を整え、読みやすく楽しめるものへ書き直して下さっています。現在はすでに何度か行き来しながら、ブラッシュ・アップが続いています。私の面倒な注文にめげることなく、楽しんでくれていると感じます。
間もなく公開となる「投稿・大人綺譚」の第三夜は、まったくの新人さんの作品です。
EGO[イーゴ]が彼のWEBデビューの場所になることに、ちょっとくすぐったい気分と同時に、小さな責任も感じます。
本当だったら、もっとアクセス数の多いサイトへ投稿した方が、たくさんの人の目に触れるのは間違いありません。
でも、彼がウチを選んでくれたことを誇りに思い、同時に感謝しながら、私は今、「投稿・大人綺譚」を実現できたことを非常に嬉しく思っています。
もちろん、すべての投稿作は私の創作ではなく、編集は裏方作業に他なりません。
にもかかわらず、私は彼らとのやりとりの中で、他者の創作に立ちあうこととなりました。
自作の執筆とはまた違った興奮を、確かに私は味わったのです。
この感謝を糧にして、私は今、「秘密の箱」を書いています。
どこかで、「くそー、負けてられないぞ」という気持ちも湧いてきますがw
それはそれ。私は私のお話を書いていきます。
どうも、何かよい星がめぐってきたらしい。
――そんな気がします。
ローカルですすむ「秘密の箱」では、ノブアキと絵梨が、それぞれの考え、それぞれの気持ちを胸に、拙い言葉をやりとりしています。
ああ、そうなのです。
ノブアキと絵梨とが別の人間である以上、二人は別のことを考える。同じひとつの出来事に対しても、別の感想を持つ。
そんなアタリマエのことを、スムーズに描きたい。
もうちょっと、もうちょっとで、次のシーンへたどり着く。
あまり時間もとれずにジリジリしながらも、私は静かに興奮しています。
オフ会で、巨大サイト運営のポリシーに関する深い考えをお聞かせくださったざくそんさんや、いつも私の鼻が必要以上に高くならないよう気の利いたツッコミを入れてくれるコバばんはもちろんのことw
私には、私と異なる立場、異なるスタンスを持ちながら、深く共感を覚える多数の「他者」がいます。
時には異なる意見、異なる見方を持つ方たちもまた、(こういうと、非常に失礼かつ傲慢ですが)大きなリソースになってくれます。
そして、投稿してくださる皆さん、感想をくださる皆さん、読んでくださる皆さん、(もちろん読まずに感想を書く人も含めw)そういった多くの人たちの有形無形の信号が、実は私の創作物にも目に見えない形で何らかの力を及ぼしているのを感じます。
今のところ私は、読者参加型の作品を書く予定はありませんが、まさに私がこだわる「私だけの物語」は、そういった意味で私だけでできているわけじゃない。
作者の特権として、ひと足先に私は私の書くものを読みます。
それだけの違いなのかもしれない――。
どうか私が書く物語が、何らかの喜び、あるいはヒマつぶし、もしくは小さな小さな化学変化の触媒にならんことを。

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