昨日聴いていたアルバムの印象メモ その6。
小学生の頃に初めて買ってもらったオーディオはアイワのミニコンポだったが、こいつがダブルカセットデッキで、当時としてはまだ珍しかったもののようだった。
そのせいで買ってもらった当初はよく友達にテープのダビングを頼まれたりしたものだった。
で、ダビングすると全く同じ音楽が入った2本のテープができる。
これを同時再生すると、テープの回転数が微妙に違っているらしくて、フランジャーのような効果と共に徐々にリズムがズレていく不思議な音像が生まれる。友達から頼まれてダビングしたチャゲ&飛鳥やオフコースでさえも、メチャクチャにサイケデリックな音楽になる。これが面白くて、テープ2台をよく同時再生して遊んでいた。
今考えると、あんなもの聴いてよく頭がおかしくならなかったなぁと思う。あ?既におかしいですか?そうですか。
スティーブ・ライヒの初期の作品「IT'S GONNA RAIN」、「COME OUT」は2台のテープレコーダーを再生して発生する「漸次的位相変異プロセス」(なんだそりゃ?)っていう手法の音楽といわれるが、初めて聴いた時は「なんだよ、これ俺昔やってたよ…」と思ったものだった。あと15年早く生まれてたら…って、その頃テープレコーダーなんて一般家庭にありませんわ。
ライヒの初期作品は、リズム的にとても面白いと思う。
手拍子だけの曲「CLAPPING MUSIC」や「DRUMMING」といった楽曲で、リズムがズレていくうちにできる不思議なうねりみたいなものは、他で聴けない種類のものだ。
これらの曲は人力でズレを作り出すわけだが、人間が叩いているわけだから当然微妙に「リズムのヨレ」が生じる。このために譜面を書くだけでは想像できなかった(おそらく二度と再現できない)だろう複合リズムが発生する。これが自分にとっては、面白い。
ライヒの、「18人の音楽家のための音楽」(1976年)と題された60分あまりの音楽は、おそらく初期からこれ以降の楽曲との分岐点になる曲なのかなと思う。なぜなら、ここにはそれまでにあった非再現性の発生する余地がないからだ。そしてこの後の楽曲は、むしろこの曲の流れを汲んでいる気がするからだ。
自分が持っているのはアンサンブル・モルデンが演奏している98年の録音だが、制作された76年という時期を考えると、何度も出てくる「パルス」的な音は、アナログシンセの音からのフィードバックはなかったのだろうか?と思ってしまう。まるでタンジェリン・ドリームみたいだ…っていうかそれは時系列的にはむしろ逆だ。ん、逆なのか?
しかし、このメロディというよりまさに「パルス」にたゆたう感覚は、心地いいことだけは間違いない。
後の作品「DESERT MUSIC」や「DIFFERENT TRAINS」に比べると、シンプルだ。そして、明快な故に「ロック的」だと思う。
ちなみに「ライヒ」というのはドイツ語読みで、英語では「ライシュ」とか「ライク」と発音するらしい。
そういえば昔は「クイーンズ・ライチ」だったけど、いつのまにか「クイーンズ・ライク」になってたもんなぁ…ってメタルで例えるのはやめた方がいいですか?そうですか。

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