演奏する人間が持つジレンマの一つとして、「結局、聴衆(観客)は演奏者の何をみているか?」という問題がある。
演奏技術の高さは、もちろん「みる」に値するものだ。
楽器を演奏するのは特殊技能に近いものだと思うので、いわゆる「超絶」とかいうテクニシャンは、それをステージや音源で披露することだけでも、お客様からおあしを頂くことができる。
しかし、それじゃあ巧ければどうにかなるのか?ものすごくうまい人やバンドが世界一なのか?というと、そういうわけでもない。
技巧としての「うまさ」っていうのは、ある程度は必要(SHAGGS除く)なんだが、どうやらそこは最重要事項ではないらしい。
「聴衆はエネルギーを受け取りたい」がために音楽を聴き、生の演奏をみるんじゃないかと自分は思っているのだ。
そういう意味でのハイエナジー最高峰のひとつは、このMC5のライブファーストアルバムなのは間違いない。
ジャケットをみれば、ドラマーだと思ってたアフロがボーカルだったという、まるで頭のでかい方がボスになれる野良猫の力関係のようなメンバー編成。
音を聞けば、さんざん前説で盛り上げといて始まった一曲目の「Rambling Rose」冒頭からチューニングがズレている。代表曲「Kick Out The Jams」はほとんど叫んでるだけだし、コーラスはめちゃくちゃ。MCはみんな好き勝手話しててよくわからない。アルバム最後のサン・ラの曲「Starship」後半部は音だけ聞いてても何やっているのかよくわからない。ああなんだかわからない。にも関わらず、最初から最後まで徹底して混沌としたエネルギーの塊が渦巻いている。
この信じられない程のハイテンションを超えられたバンドは、ごく一部しかいないと思う。
っていうかこのままのテンションのアルバム作り続けたら死ぬと思う。実際、その後リリースしたアルバム2枚は、自分はとても好きだけど、血管切れっぱなしのハイエナジーっていうわけではない。
MC5のファーストが持つヘヴィーさ具合というのは、自分にとっては70年代までの山下洋輔トリオのフリージャズと同じなのだ。パワーの表出のスタイルが違うだけなのだ。
で、自分が今やっている事、音楽をやる指針というのは、このレベルまでなんとかたどり着きたいと七転八倒することしかないんだろうなぁ、と聴くたびに思う。ま、アフロは別にやりたいわけじゃないんですけどね。
残念ながら
(←何が?)今聴いても血沸き肉踊ってしまうんだよねぇ。
ちなみに高校生の時レンタルしてきたMC5のライナーノーツには、なんとあの方がMC5について熱く語っていました。
あの方とは、この人ですね。(2回目)
「へぇ〜、GASTUNKの人もMC5好きなんだな」と思っていたら、20年後にまさか一緒にドラムセット持ち上げることになるとは思いもしませんでしたわ。
え〜、話がとっ散らかってきたので本日はこの辺で。

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