ラモーンズのドキュメンタリー映画「The End of Century」では、「ロックの悪いお手本」みたいな扱いで、ELPの「Knife-Edge」(ビートクラブの映像で有名)の映像がちらっと使われていたりする。
長髪、変な衣装、曲芸みたいなステージアクション、キーボードメインといった「プログレ」なイメージとして考えると、ELPは、確かに一番典型的な「プログレ」バンドだったんだろうなぁ、と思う。
その映像で演奏していた「Knife-Edge」という曲が収録されているのが、今回取り上げたファーストアルバムだ。
当時、キング・クリムゾン、ナイス、アトミック・ルースターのメンバーからなるスーパーグループという扱いだったらしいが、その割にこのファーストアルバムはとてもアコースティックな感触のアルバムだ。
彼らの一番のヒット曲「Lucky Man」も収録されているが、この曲なんて、最後の最後にムーグ・シンセサイザーがエフェクト的に入っているだけで、曲自体は普通にアコースティックギターがメインの曲だ。アルバム内の他の曲もまるでナイスと変わらないようなピアノ主体の曲があったりと、普通に生楽器の演奏が多いのに驚く。
確実に言えることは、アコースティックな音色が一番色褪せない、ということだ。
例えば、ドラマーだったらドラムの音色を聴けば、何年代のどこの国の録音か、大体分かる。パワーステーションのゲートリバーブじゃないが、時代の流行りの音というのは必ず録音に出るのだ。
そして「流行り」はやっぱり一過性のものだ。
録音技術とも密接に絡み合っているものだけど、アコースティク楽器の音色をそのまま録ったものが、実は一番時間という風雪に耐えうるものなのだというのが、ELPを聴くとよ〜く分かる。
ところで、ELPを聴き込んでいる人は、むしろ彼らのスタジオ盤としてのベストアルバムは、2作目の「TURKAS」とか、バンドとして最も乗っている頃の3作目の「TRILOGY」とかをお薦めするんじゃないかと思う。
けれど、4作目の「BRAIN SALAD SURGERY(恐怖の頭脳改革)」というアルバムが、自分はとても好きだ。
こっちは、まだエイリアンのデザイン等で有名になる前の、H.R.ギーガーの絵を使った変形ジャケットで有名なアルバムだ。とにかく当時最新のシンセ使いまくりの、もうサウンドエフェクトだか何だかわからないようなキテレツな音が曲中に駆け巡るという、音響的にアホ過ぎる内容。
正直、オールドウェイブとかニューウェイブとか関係ない若い世代で、音響や電子音マニアみたいな人だったら、あれは一聴の価値はある、と思っているくらい、変だ。
しかし、あの音を自分が80年代に聴いてたら、シンセサイザーの音色の古臭さに愕然としたろうな、と思う。
今だからこそ、アナログシンセの音色を楽しめるのであって、結局「飛び道具」は「飛び道具」なんだよなぁ。
インパクトは大事だけど、じゃあ10年後にどっちのアルバムをよく聴いていると思う?
と聞かれたら、一も二もなくファーストアルバムを選ぶ。そんな理由で今回はファーストをセレクトしました。
でも、「BRAIN SALAD SURGERY」も好きなんです。はい。

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