5月から、7つの施設を渡り歩くことになるよ。
そのうち5つじゃあ「お絵かき教室」ってのをやるんだ。
「カリキュラムらしきもの」が頭ン中にあるんだが、
紙に書いて示すってことがなかなか出来ねえ。けっこう忙しいんだ。
あっちでもこっちでも「この男似顔絵描きます」って前触れがあってね。
初めてのとこであいさつ代わりに描いたらけっこう受けて、
その場で描いてるわけにゃあなかなかいかねえから、家に持ち帰る。
やすみの日だってしこしこ描いてる。
渡り歩くっていったら「徘徊だな」といったやつがいる。
てやんでえ、そんなんじゃねえんだ! こういうことで忙しいんだ、わかったか。
ってわけで、あっし流の似顔絵の描き方を書いとこうと思う。
誰にも頼まれてねえけどね。
【やまさんの似顔絵教室】
まずBぐれえのやわらけえ鉛筆と、B5ぐれえの画用紙を用意しとくんな。
T.見ること
まず、よーく見るんだ。いいかい、基本は「見ること」だ。
こどもなんてのはじっと座っているもんじゃねえから、写真でもいい。
ただし、自分で撮るんだ。とるときによーく見るんだ。
いきなり写真をもらって「これ描いて」っていわれても、それはできねえ。
生の顔を見たことがねえ人間の顔は、ほんとの似顔絵にゃあならねえ。
“表情”ってものが想像できねえからだ。
ちょろちょろ動いたり、意地でもカメラを見ねえってこどももいる。
いいんだ、そういう子どもだってえことがちゃんと似顔絵に現れるから。
U.りんかく
まず顔の形を描く。これが一番むつかしい。
《こつ@》頭のてっぺんをちょっと下げとく。
一番上に描かねえことだ。なぜって、人間「目から上」がけっこう大きいんだ。
特にこどもの場合、目やら口やら描いてるうちに頭がはみ出しちまう。
こりゃあみんなよく知ってるんだが、大人の場合だってそうなんだ。
《こつA》
縦の中心と目鼻口の高さを、それぞれうっすらと線で描いとく。
バランスが実にむつかしいが、たとえ写真見て描くときでも、
ものさしで測ったりしねえことだ。じいっと見て“印象”で描く。
するってえと“人相”ってものが現れる。
整ってるやつはいいんだ、描きやすいから。でも日本人じゃあ少ないね。
意外なバランスの顔、これがいいんだ! 日本人にはこっちが多い、圧倒的に。
「このやろ、日頃偉そうなこと言ってるくせに鼻がひん曲がってるじゃねえか」
「目と目の間が広い。脳みそが大きいせいだろうが、その割にゃあ今一・・・」
「鼻の下が異様に長えや。やっぱりな・・・」
「昔はきれいだって言われていたろうなあ、昔は」
なんてね、大人を描いてる時の楽しみだ。
おっと、子どもは違うよ。
《こつB》
こどもの場合、一番気をつけなくちゃいけねえのが顎だ。
あごが小さくてまあるくて、ここにこどもらしさが凝縮してる。
なぜかって、子どもの未発達なところがここに一番感じられるんだ。
鼻も口もそうなんだけど、顎にそれを表すのが一番むつかしいんだ。
比べてみな。
ははは、どうでえ。
でも、今まで一番苦労したのはこれ、
小学6年生。子どもと大人のあいのこ!
こんな苦労話と似顔絵描きの面白さ、また書くよ。

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