オーケストラの指揮者がこんな話をしてくださった。
「私の指揮者としての理想は、私がオーケストラの前に立つだけで自然に演奏が始まり、私の思うような音楽が奏でられていくというものです」
すばらしいと思う。ベンチの奥で無言で座っているプロ野球の
落合監督の姿が浮かぶ。
指揮官として理想の姿といえるが、この裏には
オーケストラあるいはチームをどのように育て信頼関係を築いてきたかという、大前提があるように思う。
私は、若い頃
バレーボール・クラブチームの最年長メンバーで、リーダーといえばリーダーだったがすぐに使い物にならなくなり、
女子チームをつくってその
監督に納まった。
それも年とともに動きがついていけなくなって使い物にならなくなり、次に
ママさんバレーボールチームをつくってその
監督に納まった。
優秀な選手が集まったチームが強いという環境の中、私の方針は
「熱心に練習に出てくる者を使う」だったため、長い間
“出ると負け”だった。
「あのチーム、いつ一勝できるんだろう」
と心配されながら、
「わたし、バレーボール初めてやでおそがい!」
「スポーツの試合に出るのはじめてやで、もうチビリそうやがね!」
なんてこと言ってたくらいだから、初めて1セットを取ったときは大騒ぎになり、
「あのチーム、優勝したのか?!」
といわれるほど熱狂興奮した。
そのチームがはじめて
優勝したときは、役員はじめ周りの人たちから、
「長い道のりやったなあ」
と、実感のこもった祝福を受けた。
そのチームがなんと
“常勝チーム”になり、つまり強くて目立つようになったためか、私が町長になってからも当然のように試合のベンチに入ったら、
「町長が特定のチームのベンチに入るのはおかしい」
という声が出て、私は
監督を辞めた。おかげでそのあとばったりスポーツにかかわる機会がなくなり、体が硬くなる一方で困ったのだが、選手たちは長くAクラスを維持してがんばった。
と、ここまで素直に読んでもらうと、私は落合なみの
“名将”のように思えるでしょう?
実際にはまったく違うんだけど、今でも毎月その
チームのOB会が飲み会に誘ってくれるくらいだから
“迷将”くらいではあるかもしれない!
(第1話おわり)

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